合理主義者な外科医の激情に火がついて、愛し囲われ逃げられない

『お互いに好きにならない』それが新郎役を引き受ける条件だった。重石のように気持ちを押さえつけていたはずなのに、結局溢れ出してしまった。

 できることなら気持ちをぶつけたい。日村のことが本当なら、そんな関係やめてほしいとみっともなく騒ぎたい。
 でも、できるわけがなかった。

 緩く繋がれた手は温かい。この指先で悠磨は数多くの人の命を救っている。これからも彼の思うように医師として高みを目指してほしい。

 この想いは彼の邪魔になる。告げずに自分の心に沈めてしまおう。そう決めた鈴菜は思いを込めて彼の顔を見上げた。

「ありがとうございます。でも、本当に大丈夫ですから。それに悠磨さんは冷たい人なんかじゃないです。考えられないほどの努力を続けて、患者さんの命をたくさん救っているじゃないですか。私はそんな悠磨さんを心から尊敬しています」

 悠磨は黙ってこちらを見ている。

「それに覚えてます? 私、初めて話す悠磨さんに新郎役になってくれって言った女ですよ。頼りまくってます」

 鈴菜はわざとおどけて明るい声を出した。