合理主義者な外科医の激情に火がついて、愛し囲われ逃げられない

 思わずスマホのカメラを起動する鈴菜を悠磨はコーヒーを口に運びながら満足そうに見ていた。

 
 カフェでゆっくりしたあと自宅に帰ると思いきや、悠磨は「少し気分転換しないか」と言って湾岸に向かって車を走らせた。

 銀座から二十分ほどの海沿いの公園で車を降りる。車のキーをかけると、悠磨はスッと鈴菜の手を取った。

「少し暗くなってきたから気をつけて」

「は、はい」

 自然に手を繋がれて、胸がトクンと跳ねる。

 並んで遊歩道を進み、開けた場所に出る。夕刻だからか、カップルや犬の散歩をしている人がたまに行き交うくらいで人は少ない。

 ちょうど夕日と夜景がバトンタッチする時間帯。目の前には海に溶ける夕日と豊洲のビル群の煌びやかな明りが共演していた。手を引かれるまま、景色がよく見える場所まで行く。

「海を見たのは久しぶりです。綺麗……」

 ロマンティックな風景に思わずため息がでる。

「そういえば昔、家族で海に行ったな。たしか江の島だったか」

「ご家族で」

 悠磨が自ら家族の思い出話をするのは珍しい。鈴菜は静かに耳を傾ける。