合理主義者な外科医の激情に火がついて、愛し囲われ逃げられない

「俺のためにパーティに出席するんだからプレゼントするのは普通だろう。それにとても君に似合ってた」

 目を細めてこちらを見つめられ、鈴菜はまた落ち着かなくなる。

「あの、このブランド、マスターのお勧めだって言ってましたけど、マスターってファッションに詳しいんですか?」

「ああ、兄は大学卒業後フランスの広告代理店に就職して、海外ブランドの広告いくつも担当してたから」

「えっ、そうだったんですか」

 なんとなく話をふったら意外すぎる答えが返ってきた。

「数年で辞めて、向こうの友人とIT系の会社を作ったらしい。あっという間に収益が伸びて一生金には困らない状況になったから、会社は友人に譲って日本に帰ってきてバーを始めたらしい」

「ちょっと待ってください、情報量が多すぎます」

 鈴菜は軽く頭を押さえた。

 あの人の良さそうな癒やし系のマスターがそんなバラエティーに富んだ経歴の持ち主、さらに大金持ちとは。

 ひとしきり驚いたあと、気をとりなおした鈴菜はタルトとカフェラテを注文した。大きなプレートにのせられた花の形をしたタルトはデザートというよりアートだった。