合理主義者な外科医の激情に火がついて、愛し囲われ逃げられない

「勝手にお節介しただけですから。でも良かった。悠磨さんも安心できますね」

 ふたたび鈴菜はこちらを見上げ、花が綻んだように笑う。魅せられたように一歩踏み出し華奢な肩を引き寄せていた。

「ゆ、悠磨さん?」

 正面から抱きしめられた鈴菜は悠磨の腕の中で上ずった声を出した。柔らかくて小さな体は力を入れたら壊れてしまいそうだ。その温もりを感じながら本心が零れ落ちる。

「……無理だな」

(すまない鈴菜。俺はもう君を手放せなくなっている)

 鈴菜のすべてが欲しい。心も体も笑顔も涙も、彼女の人生すべて自分のものにしたい。33年間生きてきて初めて得た激しい感情だった。

 でも、今剥き出しの感情を鈴菜にぶつけるわけにはいかない。彼女にとって悠磨はあくまで世話のかかる同居人でしかないのだから。

「あの、大丈夫ですか?」

 体調が悪いと誤解したのか、鈴菜は心配げな声を出し離れようとする。しかし、悠磨はそれを許さなかった。

「ごめん。飲みすぎたみたいだ。少しだけこうしてていいか」

 本当は酔ってなどいないが、ズルい嘘をついて体重を軽く預けるように鈴菜を抱き込んだ。

「はい……」