合理主義者な外科医の激情に火がついて、愛し囲われ逃げられない

 なりゆきで結婚したのも相手が鈴菜だったからで、他の女性とだったらこの選択はあり得なかった。自覚できない内にどんどん彼女のペースに引き込まれ、徐々に想いが炙り出されていった。

 鈴菜になれなれしく距離を詰める増田を見て苛立ったのも、他の男に近づけたくなかったからだ。

 彼女の料理をおいしく感じるのも、他愛のない会話に安らぎを覚えるのも、不安な顔を見ると落ち着かなくなるのもすべて――。

(今さら思い知るなんて、俺はなにをやってるんだろうな)

 所在なく持っていたグラスを置くと、純也の揶揄うような声が聞こえた。

「で、望月先生はどうするんだ? バシッと気持ちを伝えるのか」

 純也は自分たちの結婚式がその場限りの予定だったこと、なりゆきで結婚したものの半年間の期限付きだということも伝えてある。

 さすがに『お互い好きにならないこと』を新郎役を引き受ける条件にしたとは話していないが。

 あれは、見た目やステータスだけで大勢の女性に言い寄られてきた悠磨が張った予防線だった。万が一でも自分に本気になられたら面倒と思っていたから。

 結局自分の方が鈴菜に嵌まっているのだから目も当てられない。