合理主義者な外科医の激情に火がついて、愛し囲われ逃げられない

「親父も言いすぎたのを後悔してたんだろう」

 悠磨がこぼすと純也も気が抜けたような顔になった。

「俺もいい年して意地になっていた自覚はあったからね。帰り際にショップカード渡しておいたよ……お前が鈴菜ちゃんに頼んだわけじゃなかったんだろう?」

「ああ。事情を話したのはバーに父を連れて行った話を聞いた後だ」

「はーすごいね。お前の奥さん」

 純也は笑みを浮かべグラスを磨く。どこかスッキリした顔つきの兄を見ながら悠磨は心の中で呟く。

(本当に君はすごいな、鈴菜)

 父と兄の不仲を気にしてはいたものの、悠磨は積極的に動こうとしていなかった。親子なのだからその内わだかまりも解消するだろうと思っていた。

 しかし鈴菜はあっさりと彼らが歩み寄るきっかけを作った。

 鈴菜は人をよく見ていて、躊躇なく行動する。最初から離婚が決まっている夫の体調を心配して世話を焼くし兄と父の仲を取り持とうする。仕事でも彼女のスタンスは変わらず顧客の女性を気遣って苦手な病院に進んで付き添う。

 これまでの悠磨だったらすべてが理解できないお節介で〝無駄〟な行動だ。