合理主義者な外科医の激情に火がついて、愛し囲われ逃げられない

「……だから、お互い不倫しようとでも? そんなこと許されると思ってるんですか」

「バレなきゃいいんだよ」

 鈴菜が睨みつけても土谷はまったく悪びれない。

「医者は浮気率が高いっていうぞ。お前の旦那、有名な外科医なんだろう。それであの見た目だったら周りが放っておくわけがない。看護師の愛人とよろしくやってるよ」

「愛人……」

 日村の顔が浮かび、鈴菜の胸はギュッと締め付けられる。

「だから俺たちは俺たちで楽しめばいい。なぁ、結婚式のときのお前、いい女だったから別れて惜しかったと思ってたんだよ」

 猫なで声を出しながら土谷はこちらに腕を伸ばす。指先が頬に触れる前に鈴菜はその手を思い切り叩き落とした。

「いてっ……おい、なんだよ!」

「ふざけないで。不倫じゃなくてもあなたみたいな男と、二度と付き合うわけない。それより奥さんやお客様にちゃんと向き合ったらどうなの!」

 怒りを一気に吐き出し、距離を取る。ポカンとしていた土谷の顔はすぐに怒りで赤く染まった。

「お前、いい気になりやがって!」

 騒ぐ土谷を置いて、鈴菜は足早にその場を後にした。

(本当に、最低……)