合理主義者な外科医の激情に火がついて、愛し囲われ逃げられない

 そう言ったら、悠磨は『小林さんは孫と仲直りするきっかけが欲しかっただけだろう』と笑っていた。

 表面上、鈴菜たちの暮らしは順調だ。悠磨は相変わらず忙しいものの、以前に比べればだいぶ人間らしい生活を送っている。

 しかし鈴菜の心はずっと晴れないままだ。

 日村に〝愛人宣言〟されてから、何度も悠磨に真偽の確認をしようとしたけれど結局切り出せていない。聞いて『そうだが、問題あるか?』って当然のように認められたらどう反応していいか分からないからだ。

(悠磨さん、元々結婚するつもりはないって言ってたし、日村さんも割り切ってそういう関係を受け入れたのかな。なんというか、お互い楽しめればいい的な)

 彼の帰宅が遅くなっても今までは仕事だと疑わなかったが、日村とふたりでいたのではないかなどと穿ったことを考えてしまうようになった。

 日村は夫婦の不和や破局を狙って鈴菜にあんな話をしたのかもしれない。

 しかし、自分たちは普通の夫婦ではない。成り行きで戸籍上妻になったが、もともと半年間限定の偽装結婚だ。悠磨に愛人がいたとしてもとやかく言える立場ではないのだ。

「鈴菜さん、大丈夫ですか?」