合理主義者な外科医の激情に火がついて、愛し囲われ逃げられない

 手術を数多くこなす悠磨にとって彼女は欠かせない存在のはずだ。鈴菜は笑顔を作り軽く頭を下げた。

 しかし直後、日村は表情を歪ませこちらに一歩近づいた。

「いい気なものね」

「あの?」

 突然低くなった声色に鈴菜は目を瞬かせた。

「そうね。仕事もそうだけど、それ以外でもお世話させていただいてるわ……だって私、望月先生と特別な関係だから」

「え……」

 内緒話をするように囁かれ、心臓がドクンと跳ねる。

「先生が結婚する前から続いているの。もちろん今も。意味、分かるわよね?」

(まさかそれって、日村さんが悠磨さんの〝愛人〟ってこと?)

「あなたと結婚しても、私たちは切れていないわ。きっと彼、私を手放せないんでしょうね。でも、彼を責めないでね。医者と看護師のこういう関係って、大病院では普通のことだから」

「あ、あの……」

 次々と言葉を並べたてられるが、混乱してどう返していいかわからない。

「これからもよろしくお願いしますね、奥様」

 日村は人の悪い笑みを浮かべ用は済んだとばかりに立ち去っていった。鈴菜は、ぼんやりとその後ろ姿を見送るしかなかった。



「わぁ、今日のお弁当も美味しそう!」