合理主義者な外科医の激情に火がついて、愛し囲われ逃げられない

 それまで楽しそうにこちらを見ていた増田が、「あっ、まずい」と慌てた声を出した。

「そうだ僕、葛西先生に望月先生を呼んでくるように言われてたんだった。ごめん! 奥さんと一緒にいたいのはわかるけど、医局に戻ってもらっていい?」

「あ、なら私、ここで失礼しますね」

 鈴菜はさりげなく悠磨の腕から脱出しながら申し出る。

「……そうか、じゃあ、気をつけて帰ってくれ」

 わずかに眉間に皺が寄った気がしたが、悠磨はすぐにいつもの対外的な笑顔に戻り、増田に「増田先生、行きましょうか」と声を掛ける。

「えっ、僕も? まあいいか。奥さんまたね」

 苦笑した増田は鈴菜に手を振り、悠磨と並んで歩き去った。

(さて、私も職場に戻らなきゃ)

 ふたりを見送った後日村に会釈しようとすると、彼女は微笑んでこちらに近づいてきた。

「お目にかかれてうれしいです。私、オペ室の専属看護師をしております日村といいます」

 目の前に立った日村は近くで見ても美人だ。

「オペ室専属の看護師さんだったんですね。主人がお世話になっております」