合理主義者な外科医の激情に火がついて、愛し囲われ逃げられない

 鈴菜の腰に大きな手を添えているのは悠磨だ。密着した体から彼の温もりを感じる上に、蕩けるような甘い笑顔を向けられ、鈴菜の心臓はギュンと締め上げられる。

「あの、お仕事の方は大丈夫ですか」

 あえて確認したのは状況が恥ずかしいのもあるが、用件を終えたはずの日村が立ち去らずにこちらを見ていたからだ。

「ああ、確認だけだから大丈夫だ。心配してくれてありがとう」

 悠磨はさらに目を細めた。

「おー、さすが新婚さんだ。仲いいねぇ」

 増田の茶化すような声に、鈴菜はハッと気づく。

(そうか、悠磨さんは職場で私たちが仲のいい夫婦だってアピールをしたいんだ)

 でなければ人前でこんな見せつけるような行動を取るわけがない。だったら、自分もきちんと〝妻〟として振舞わなければ。

「失礼しました。改めて、望月の妻の鈴菜です。夫がいつもお世話になっております」

 居住まいを正して増田、そして日村に頭を下げる。しかし腰を抱かれたままなので少々やりづらい。

「じゃあ行こうか」

「えっ?」

 一生懸命挨拶したというのに、悠磨はすぐにこの場を立ち去ろうとばかりに促す。彼の考えてることが今一つ掴めない。