合理主義者な外科医の激情に火がついて、愛し囲われ逃げられない

「うえぇっ?」

「ねぇ、君、もしかして望月先生の奥さん?」

 そこに立っていたのは悠磨と同じ年頃の白衣の男性だ。

「え……は、はい。妻です」

 慌てて返事をすると、男性は嬉しそうな顔になる。

「僕は呼吸器外科の増田っていいます。よろしくね。なるほど、やっぱりかわいい女性だ。完全無欠のエリートドクターはどんな女性を選ぶかすごく気になっていたんだけど、納得だね」

「いえ、そんな」

(悠磨さんの同僚の先生だったのね。ビックリして変な声が出てしまった。そしてリップサービスが心苦しい……)

「でも、カッチリきまったスーツでどうしたの。似合っているけど、お仕事中?」

 パーソナルスペースの狭い人のようだ。増田は軽い調子でどんどん距離を詰めてくる。

「あ、これにはちょっとした事情が……」

 ありまして、と続けようとした言葉は、横から出てきた手に止められた。

「鈴菜」

 低い声とともに腰を引き寄せられ、増田との距離が開く。

「待たせて悪かった」

「悠磨さん」