合理主義者な外科医の激情に火がついて、愛し囲われ逃げられない

「ふふ、子どもじゃないんですから白衣のお医者さんを見て泣いたりしませんよ」

 鈴菜は小さく吹き出した。

 少し落ち着かない瞬間もあったが、悠磨の顔を見てからまったく不安が無くなった。それに白衣姿はむしろ――。

「望月先生」

 鈴菜の思考は悠磨を呼び止める声で止まる。見ると、看護着姿の女性がこちらに近づいてきた。

「日村さん」

「少しお話よろしいでしょうか」

 日村と呼ばれた看護師は落ち着いた様子で続ける。

「わかりました。鈴菜、少しだけ待っていてくれるか?」

「はい」

 うなずいた鈴菜は悠磨から離れ、廊下の端に寄った。

「夕方の井上さんのオペですが、手術室が二番から五番に変更になりました」

 日村はメモを見ながら悠磨に報告を始めた。ここからでも少し声が聞こえてくる。

「二番はどうしたんですか」

「午前のステント抜去で合併症が出て少し長引きまして。片付けまで考えると、余裕持たせた方がいいようです」

「そうでしたか。五番の機器類のチェックは?」

「はい、今日の朝、機器点検が入っていて、使用可能の確認取れてます」