合理主義者な外科医の激情に火がついて、愛し囲われ逃げられない

「交際一年で、結婚かぁ。こんな豪華な結婚式準備も相当かかるだろうから。知り合ってすぐに結婚決めたんでしょうね」

 カラフルに装飾されたプロフィールブックを見ながら璃子がつぶやく。いつの間にかお色直しになっていて新郎新婦は退場していた。

「……一年?」

「ここに書いてあります。新郎が本社で偶然秘書室勤務の専務のご息女である新婦と知り合い、お互い運命を感じたって」

 璃子がふたりの馴れ初めが書かれたページをこちらに見せながら指し示した。

 考えないようにしていた事実が無情に突き付けられる。自分たちが別れたのは半年前だ。それから今日の新郎新婦が知り合って交際、結婚式となるのはどう考えても早すぎる。完全に交際期間が被っている。

(私、二股かけられて棄てられたんだ)

 選ばれたのは二十五歳の専務の娘。はっきりした顔立ちの美人でスタイルも良く、デザイナー特注のマーメードラインのウエディングドレスを綺麗に着こなしていた。

 一方鈴菜は二十九歳。一五七センチほどの身長で顔もスタイルも十人並み。ごく一般的な家庭に育ち、平均的な偏差値の大学を無難に卒業した。自慢できるのは健康な体と体力くらいだろうか。