合理主義者な外科医の激情に火がついて、愛し囲われ逃げられない

 ここは彼の勤務先だから顔を合わせてもおかしくないが、この巨大な病院内でよくタイミングが合ったものだ。

(でも、今小林様は心臓の検査をするって……もしかして)

「こちらのお客様がご来館中に、おばあさまが救急車で運ばれたという連絡が入ったので、付き添ってきたんですが……」

 説明する鈴菜の横で、瑞穂は悠磨と鈴菜に視線を往復させた。

「もしかして、先生は望月さんのご主人だったんですか?」

「ええ。あなたは、さきほど入院された小林菊枝(きくえ)さんのご家族でしたね」

 悠磨の返事に瑞穂、そして鈴菜も目を丸くした。

 どうやら、運ばれてきた彼女の祖母の処置をしたのは悠磨だったらしい。

「こんな偶然、あるんですね」

「本当に、びっくりしました……あれ?」

 鈴菜と驚き合っていた瑞穂だったが、廊下の奥の方に視線を向けて声を上げた。

「仁さん?」

 そこには、こちらに駆け寄ってくる男性の姿があった。

「瑞穂!」

 彼は瑞穂の婚約者の藤田仁だ。

「今日の夕方に着く便だって……」

 目を丸くする瑞穂に藤田は肩で息をしながら答えた。