合理主義者な外科医の激情に火がついて、愛し囲われ逃げられない

 すまなそうな顔で電話を取った瑞穂だったが、突然声が上ずった。

「……倒れた? 嘘でしょう?」

 彼女の青い顔にただならない雰囲気を感じ、鈴菜は固唾をのんで見守る。

「容体は?……そう。私も行くから、場所、送ってくれる?……うん、わかった」

 電話を切ったものの、瑞穂は画面を見たまま動かない。見るとスマートフォンを持つ手が震えていた。

「小林様、どうされましたか」

「おばあちゃんが、家で倒れて意識が無いって……救急車で運ばれるって」

 鈴菜は緊張でグッと息をのみこむ。

「どうしよう……おばあちゃんになにかあったら」

 瑞穂は明らかに動揺していて動くことができないでいる。鈴菜は席を立ち座り込む彼女の横で膝を付いた。

「まず落ち着きましょう。病院に行かれるんですよね。すぐにタクシーを呼びます」

 なるべく冷静な声を出して、震える瑞穂の手に掌をそっと重ねる。

「は、はい」

 彼女は我に返ったように鈴菜の顔を見た。目にはうっすら涙が溜まっている。

「病院までご一緒します。お父様と連絡を取り合いながら向かいましょう」

(この後接客の予約は入っていない。大丈夫だ)