合理主義者な外科医の激情に火がついて、愛し囲われ逃げられない

 藤田がこの婚約者を心から愛してデレデレになっているのはこちらから見ていてもよくわかった。

「ふふ、そうだといいんですけど」

 瑞穂は頬を染め、幸せそうに笑う。ふたりの結婚には一見なにも障害がないように見えるのだが。

「出席される方に合わせて、食事の内容を変えることも可能ですが……おばあさまとは、まだ?」

 しばらく料理の内容の説明し、さりげなさを装って気になっていたことを切り出してみる。

「……招待状は出したんですが、今のところ何の反応もなくて」

 瑞穂は、顔を曇らせて溜息をついた。

「仁さんが再婚だからって、なんであんなに反対するかわかりません」

 実は藤田は二十代半ばで一度結婚していたが、一年の短さで離婚している。忙しさや価値観の違いが原因の円満離婚で子どももいない。しかし、瑞穂の祖母は離婚歴を理由に彼との結婚を猛反対し、藤田と会おうともしないらしい。

「おばあさまは、とにかく小林様が心配なんだと思いますよ」

 瑞穂は子どもの頃に母を亡くしており、父方の祖母が母親代わりになって瑞穂を育てたそうだ。その分心配もつきないのだろう。