合理主義者な外科医の激情に火がついて、愛し囲われ逃げられない

 三か月前の自分たちの結婚式が、もうずいぶん前のような気がする。

(あのときの悠磨さん、とにかくかっこよかったな)

 鈴菜の脳裏にタキシード姿の悠磨が浮かんだ。スッと伸びた高い背に正装はとても似合っていて、後ろに撫でつけたヘアスタイルも色気があった。

 彼は本当に新郎になり切ってくれて、挙式では鈴菜の唇にキスを――。

(ちょ、ちょっとなにを思い出してるの)

 このところ、悠磨のことを思い出す頻度が増えた。結婚式のこと、一緒に暮らす中で垣間見えるようになったリラックスした表情や、鈴菜の料理を褒め、『ありがとう』とお礼を言ってくれたときの飾り気のない笑顔も。

「望月さん?」

 瑞穂が軽く首を傾げている。どうやら動きが止まっていたらしい。

(お客様との打ち合わせ中に考え事なんて、プロ失格だから)

 我に返った鈴菜は気が緩んでいる自分を心の中で平手打ちした。

「失礼しました。でも、藤田様は小林様がいいと思ったものを無条件で受け入れてくれそうですね。いつも、婚約者がかわいくてしょうがないっていう表情されてますから」