合理主義者な外科医の激情に火がついて、愛し囲われ逃げられない

「角煮、うまいから。今日の弁当もうまかった。ありがとう」

 その言葉に鈴菜は目をパチクリさせる。

 自分のお節介にお礼を言われたのは初めてかもしれない。とても自然な表情を前に、鈴菜の胸はなにかで締めつけられたように苦しくなる。

「あ、ありがとうなんて、ここにきて外面発動ですか?」

 動揺と恥ずかしさでどう反応していいかわからず、かわいげのない返しになってしまった。

「今さら君に対外的な顔を見せてもしょうがないだろう」

 悠磨は呆れたような顔をしてからさらに笑う。

 それは悠磨が鈴菜には素で接してくれているということを意味していて、締め付けられていた胸の奥の方がキュッと小さな音を立てた。

(え、ちょっと待って、なに私ときめいているの?)

 謎の焦燥感にかられた鈴菜は、気を逸らそうと話題の転換を図った。

「そうだ! 夕方お義父さんから電話がありまして」

「父から?」

「はい、来週の金曜、仕事の用事でこちらに来られるそうです。夜時間があるそうで、三人で食事でもとおっしゃっていました」

「こちらに来るにしても、これまでは連絡なんてよこさなかったのにめずらしいな」

 悠磨は意外そうな顔をする。