合理主義者な外科医の激情に火がついて、愛し囲われ逃げられない

「書類ですか?」

 リビングの方を見た福沢の言葉に鈴菜は目を丸くした。

「以前はあちらにファイルや紙が出ていて雑然としていたのですが、お仕事関係のものには手を触れないようにというお話でしたのでそのままにしていたんです。でも、奥様がいらしてからまったくなくなったので私もスッキリしました」

 ダイニングテーブルを拭き終えた福沢は、布巾を洗うためにキッチンに入っていった。

(私、一度も片付けたことないけど、どういうこと?)

 鈴菜はリビングのローテーブルを眺めながら首を傾げる。そもそもここで暮らし始めてから悠磨の仕事関係の書類は一度も見たことがない。

 そういえば、引っ越し当日に悠磨に言われた覚えがある。

『言い忘れていたが、俺の部屋には入らないでくれ。いろいろと生々しい画像付きの資料が出しっぱなしになっているかもしれないから。君はああいうの苦手だろう』

 あの言葉は自室に入られたら嫌だという牽制だと思っていた。

 でももしかしたら、鈴菜のためにリビングで広げていた資料を片付けた上で、目に触れないように言ってくれたのかもしれない。

(都合のいい解釈かもしれないけど、もしそうだったら)