合理主義者な外科医の激情に火がついて、愛し囲われ逃げられない

 鈴菜は謎の使命感に駆られて毎日悠磨の身の回りの世話をした。
 最初の頃はしぶしぶ従っていた彼も最近は当たり前のように鈴菜の作った料理を食べてくれる。今日もメインの鶏の照り焼きにピーマンの炒め物などを添えて栄養バランスを意識した弁当を作った。休息も意識的に取っているようで、あれから一度もソファーで行き倒れていない。

 しかし、悠磨は家事能力が壊滅的にない。

(いや、ないというか、やる気がないだけだと思うんだけど)

 温かい朝食くらい自分で作れるようになった方がいい。そもそも心臓血管外科医なんて手先が器用なはずだから料理くらいお手の物だろう。そう思って一緒に作らないかと誘ってみたら『今まで一度も料理を作ったことはないし、別に必要性を感じない』と即答され撃沈した。

 掃除も洗濯も同様のようで、なんでもプロに頼めばいいと思っている。本当に清々しいくらい興味のあることにしか力を割かない人だ。

(今となっては、あの性格でよく面倒でしかない新郎役を引き受けてくれたなぁ……)

 鈴菜はつい遠い目になる。

「それに、ご主人のお仕事関係の書類は奥様が片付けて下さっているんですよね。ありがとうございます」