合理主義者な外科医の激情に火がついて、愛し囲われ逃げられない

 日村は悠磨の手にある弁当箱にスッと視線をやり、目を細めると会釈して出て行った。

 その姿を見送っていた増田が、テーブル越しに身を乗り出してきた。

「……新婚なんだから、しばらくそういうことは自重したほうがいいよ」

 小声で耳打ちされて悠磨は苦笑する。

「まさか日村さんのことを言っていますか? 彼女は優秀なオペ看で頼りにしていますが、それ以上の関係になろうなんて思ったこと一度もないです」

「でも、彼女美人でスタイルもいいし、迫られたらちょっと遊びたくなっちゃったりして」

 からかっているのか増田は楽しそうだ。きっと、彼の方はこの調子でいろいろなところで〝ちょっと遊んで〟いるのだろう。

「ご冗談を。迫られたこともありませんよ」

 自分に変な色目を使ってこないからこそ、安心して彼女を指名しているのだ。

 悠磨はわざとらしく肩をすくめて、席を立った。

***

福沢(ふくざわ)さんすみません。前よりお仕事増えましたよね」

「いえいえ、奥様がいらっしゃる前があまりにも物がなさすぎたんですよ」