合理主義者な外科医の激情に火がついて、愛し囲われ逃げられない

 増田は腕のいい医師で、見た目も爽やかで気さくなので職員や患者に人気がある。一方女性に対して節操がないいわゆる〝チャラい〟男だ。独身を売りにして院内の看護師数名に同時に手を出しているという噂を聞いたことがあるし、本人も否定しない。

 そんな男に鈴菜のウエディングドレス姿を見せると思うとやけに拒否感を覚えた。職場で結婚をアピールできるいい機会なのに。
 自分の感情に戸惑うものの、やはり見せる気にはなれない。

「えー、ケチだなぁ。少しくらいいいじゃないか」

「ああ、もう行かないと」

 不満そうな声を上げる増田をやんわりかわしながら弁当箱を片付けていると、休憩コーナーに人影が近づいてきた。

「望月先生、そろそろカンファレンスのお時間です」

 声を掛けてきたのは日村という女性看護師だ。年はたしか三十一歳。オペ看といわれる手術室の専属で執刀医のサポートをしている。優秀で勘がいいから悠磨はオペで彼女を指名することが多い。

「日村さん、知らせてくれてありがとう。今行くよ」

 ちょうどいいタイミングに呼びに来てくれたと感謝しながら、彼女に笑いかける。

「カンファレンスルームでお待ちしていますね」