合理主義者な外科医の激情に火がついて、愛し囲われ逃げられない

 あの世話焼きの性格は看護師に向いているかもしれない。

(いや、絶対無理だな。彼女は病院嫌いだ)

 悠磨は思わず苦笑する。

 最近は、ふとしたときに鈴菜を思い出す時間が増えている。暇さえあればオペや症例のことばかり考えていた自分とは思えない変化。しかもそれを不快だと思わないのだ。

「望月先生、前より顔色が良くなった気もするし、やっぱり結婚すると違うもんなんだなぁ」

 感心したような増田の声に悠磨は我に返る。気づくと弁当箱は空になっていた。

「はは、そうですね」

 蓋を戻しながら軽く調子を合わせる。

「そうだ、奥さんの写真ないのか? 見せてよ」

「ああ、ありますよ」

 結婚式は招待客をしぼり、上司と同期を優先したので増田は出席していない。

 こういう時のために結婚式の写真を鈴菜から何枚か送ってもらってある。うなずいてスマートフォンに手を伸ばしかけたのだが。

「……すみません、そろそろカンファレンスがあるのでまたの機会に」

 気づいたら笑みを作って断っていた。