〇沖縄・別荘テラス・朝
和歌「あ…アレとは…?」
香坂「俺のこと抱きしめてくれたやつ」
バッチリ覚えてる…やばい…と慌てる和歌。
和歌「…だ、抱きしめてはないです!」
香坂「へぇ…じゃあ何したの?」
墓穴を掘った和歌に、香坂はまたもニヤリと笑う。
和歌「……っ」
何も言えなくなり目をそらす和歌。
しばらくしても目を合わそうとしない様子を見て香坂が掴んでいた和歌の手を引き寄せる。
和歌「わっ……」
香坂に軽く抱きよせられる。
香坂「こういうことしてくれたんだよ」
そのまま昨晩の和歌のように頭をポンポンなでている。
現状の恥ずかしさと、昨晩自分がこれをしたのか…という恥ずかしさが相まって真っ赤な和歌。
そんな黙って自分の腕の中にいる和歌を見下ろすと、髪の毛の間からうなじが見えてグッとくる香坂。
香坂「和歌…今日も海入るの?」
和歌(え…今その質問?)
和歌「…入るつもりですけど」
香坂「ふーん…」
そう言った後、うなじに香坂の唇が近づいてきて触れた。
和歌が混乱してる中、そのまま唇が触れている所からピリッとした感触が伝わってくる。
和歌「ひゃっ……」
うなじにキスマークをつけ、ようやく香坂が離れる。
和歌「な、なっ…なに…を」
香坂「水着だと見えちゃうかもね、それ」
何が起こったかよくわからない真っ赤な和歌を横目に、ニヤリと悪い笑みを浮かべる香坂だった。


○朝食後・別荘リビング・朝
理人以外のメンバーが揃い、朝食を食べ終える。
和歌と香坂、楓と奏斗がそれぞれピリッとした異様な空気感なことを察する芽依と結衣子。(※それぞれ男性側からの強引な迫り方にドキドキしつつも、お仕置き状態)
芽依「きょ、今日はどうしよっか~…?」
この空気を打破しようと作り笑いで話す芽依。
奏斗「楓と美ら海水族館行こうかと思ってるんだけ…」
楓「それ!!女子みんなで行かない!?みんなで!!」
奏斗を遮るように思いっきり話す楓。
みんな色々と察する。
楓「和歌ちゃん!どう?」
和歌(い、いいのかな…)
チラッと奏斗を見ると、そう来るか…というばつの悪そうな顔をしている。
和歌(う…奏斗さんには悪いけど…私もさっきのせいで水着着れないし…)
思い出してまた赤くなる和歌。
楓「?」
和歌(…奏斗さんごめんなさい!)
和歌「い、行きましょう…!」
楓「やった!」※ホッとする
奏斗「……じゃあ…みんなで行こう…」※半泣き

結衣子「あれ、理人さんは?」
奏斗「そういえば…」
居ないなと、辺りを見回す一同。
そこへリビングのドアが開く。
理人「おはよ…う……遅くなって…ごめ…ん」
振り返ると、フラフラで今にも倒れそうな理人がいた。
一同「ちょっと!大丈夫ですか!?」
理人「お恥ずかしいけど…熱が…」「部屋に…こもるから…みんなは遊んで…」
奏斗「いや、でも…置いていくわけには…」
理人「大丈夫…移す方が厄介だし…」「むしろ一人で…寝させて」
そう言って部屋に戻っていった理人。
楓「ど、どうしよ…大丈夫かな」
一同悩む中、香坂が口を開く。
香坂「ああ言ってるし、出かけた方がいいだろ、うるさくないし」「俺が車出すよ」
奏斗「そ、そうだね!水とゼリーとかだけ後で持って行ってあげて出よっか!」
みんなでその流れになっている中で、結衣子が口を開く。
結衣子「あ、あの…!」
結衣子「私…理人さんに付いてます!」
え?と驚く一同。
結衣子「一応私の家の別荘なので…色々とわかってることも多いし、土地勘もあるので…」
楓「でも…結衣子1人だけ…」※申し訳なさそうに
結衣子「いいんです!むしろ…私が残りたいんです!」※少し照れながら
至以外、何となく結衣子の気持ちを察する一同。
至「…え、なら俺も…」「外出疲れる…」
空気の読めない至に思わず芽依が間に入る。
芽依「いっ至くん!!一緒に水族館行こう!!ね?」「私イルカに餌あげたいんだ~!」
「ほらっ!可愛いでしょ」とスマホでその紹介ページを見せる。
至「え…別に興味な…」
芽依「行こうね!!!」


○水族館へ向かう車内・昼
ハンドルを握る香坂、助手席には和歌。後ろに残りのメンバーが座って水族館へ向かっている。
運転する香坂をチラッと見る和歌。
和歌(運転…かっこいい…)
和歌(一気に大人に見える…)
和歌モノ『2歳しか違わないのに…もっとずっと遠くに感じる…』
静かな和歌を横目で気にかける香坂。
香坂「大丈夫?」
赤信号のタイミングで和歌のおでこに手を当てる香坂。
和歌はドキッとして香坂の方を見る。
和歌「…すみません、大丈夫です」
香坂「ん」
そう言ってまた頭をポンポン。信号が青になるタイミングまでポンポンは続いた。


○美ら海水族館・入口・屋外・昼
香坂の運転で無事に到着。
奏斗「ジンベエザメ楽しみだわ~」
そう言って入口前のジンベエザメのモニュメントの前で写真を撮る。
芽依「暑いし、早く中入ろっか♪」
入口に向かおうとした芽依の手を至が掴む。
芽依「えっ…」
至「イルカ…あっち」
入口と別方向の屋外のイルカの餌やりコーナーを指す。
芽依(あ…そっか、さっき私…)
至「行こ」
芽依(律儀だな…)
クスっと嬉しそうに笑う芽依。至と2人でそっちの方向へ向かい別行動となった。


○同刻・別荘・理人の部屋
汗をかきながら寝ている理人。その横で結衣子が座っている。
結衣子(ふう…自分で薬飲んでたみたいだし、少し熱も下がってきたかな)
自身が風邪をひいた時、両親が仕事で忙しくて誰もおらず、寂しかった過去を思い出す。
結衣子(怒られて嫌がられるかもだけど…)
結衣子(起きたら…やっぱり誰かがそばにいた方が…)
そんな時、目を覚ます理人。結衣子の姿が視界に入り驚く。

理人「え…なんで…」
結衣子「すみません、心配だったので」
朦朧としつつも、現状を把握する理人。
理人「ダメって言ったのに…はぁ」※呆れたようにため息
結衣子「でも、私がここの家を一番わかってるので…何かあった時対処できるかと」
理人「俺もいい大人だから。学生の手を煩わせるわけには…」
相変わらずの一線を置くような言い方に少し怒る結衣子。
結衣子「あのですね…!風邪ひいた時は大人も子どもも関係ないんです!」
結衣子「大人だからっていつでもカッコよくいなくていいんです!弱いところ見せて甘えていいんです!」
真剣な眼差しでお説教する勢いの結衣子に驚き、たじろいでしまう。
結衣子「あと…仮にも私は医学部です。まだスキルも知識も何もないけど、こういう時に放っておけないなという心は持ってます」
理人「……」
結衣子「わかったらまた寝てください」「あ、熱測ってくださいね」
その時、理人が結衣子の手を引き、自分のほうへ寄せる。
結衣子「きゃっ…」
2人のおでことおでこがコツンとくっつく。
かなりの至近距離に焦って赤くなる結衣子。
結衣子「なっ…」
理人「熱測るんでしょ」
熱でほてりながらも悪い笑みを浮かべる。
何が起きているのか混乱しながら結衣子が何とか声を絞り出す。
結衣子「…た、体温計で…測るんです」
それでもおでこを離そうとしない結衣子に、フッと微笑む理人。
理人「脇に入れてよ、測って」
Tシャツの首元を下に広げようとする理人。
結衣子「……じっ自分で…」
理人「甘えていいんでしょ?」
ずっと翻弄されっぱなしで悔しいながらもドキドキし続ける結衣子であった。


〇同刻・美ら海水族館屋外エリア・昼
イルカへの餌やり体験を終えた芽依と至。
芽依「楽しかったね~♪イルカちゃん可愛かった~」
至「手…くさい……」
芽依「水道あるよ!手洗ってこ~」
隣で適当に洗う至を見て、芽依が石鹸を付けた手で至の手を上から包む。
芽依「もっとちゃんと洗わないと!くさいままだよ~」
ニコッと笑いながら意識するそぶりもなく、至の手を思いっきり触っている芽依を見て、複雑そうな表情の至。

洗い終わり、芽依が前方を見て気づく。
芽依「ねぇあっち!ウミガメも餌あげられるらしいよ」
至「……もう暑い」
芽依「そうだよね、ごめんごめん!急いでみんなとも合流しないとだしね」
芽依「イルカ付き合ってくれてありがとうね~!」
屈託なく笑う芽依。
くるりと向きを変えようとする芽依の腕を掴む。
至「…行くんでしょ、ウミガメ」
芽依「えっ…でも」
至「まだ合流しなくていいよ」
そう言ってウミガメの方へ歩こうとする至。
芽依(合流より暑さが心配なんだけど…)
芽依(もう…なんだかんだ優しいんだよなぁ)


○美ら海水族館・館内
美ら海水族館のハイライトでもある大きなジンベエザメの水槽前へやってきた和歌・香坂・楓・奏斗。
和歌(大きい…すごい)
奏斗「おお~かっこいいなぁ」
相変わらず嬉しそうに写真を撮る奏斗。そんな奏斗を微笑ましく見守る楓。
奏斗「楓のことも撮らせてよ」
楓「…私だけじゃなくて一緒に写りたい」
照れながらの可愛いお願いにキュンとする奏斗。

恋人らしい空気感を出す2人を少し離れたベンチから微笑みながら見守る和歌。
香坂「…羨ましい?」
後ろからふと話しかけてきて少し驚くが、話始める和歌。
和歌「羨ましいというより…嬉しいです、想い合ってる2人が結ばれて」
和歌(奏斗さんのこと話す楓さん…可愛かったし)
香坂「想い合ってる…か」「…和歌は?そうなりたくないの?」
和歌の隣に腰かける香坂。
和歌(……本人の前で…ちょっと気まずい)
和歌「…そりゃ憧れますけど…でも」
和歌(やっぱりこの気持ちはしまっておく)
和歌「毎日精いっぱいで…恋愛してる余裕ないですよ」
和歌モノ『邪魔になりたくない…何より今の関係壊したくない』
和歌モノ『でも…近づくともっと近づきたくなって…気持ちが止められない』
少し悲しそうに笑う和歌を見て、それ以上何も聞かない香坂。
2人で水槽を眺める。
香坂の「勉強詰めでバイトもあんま来れなくなりそう」という言葉を思い出す。
和歌(本当…このままこの時間が続けばいいのに…)
和歌(キ、キスマーク…もいつかは消えちゃう…)
和歌モノ『気持ちも消せれば楽なのに…』
すぐ隣にいることの嬉しさを感じながらしばらく水槽を眺めていた。


――第7話終了――