氷の王子は私に優しくしてくれます



 「それでー?その後どうなったの?」

 次の日の昼休み、私、佳奈、奈々ちゃんの三人でお弁当を食べながら、私は佳奈の質問攻めに遭っていた。

 「それでって言われても…、先輩に家まで送ってもらって、家の前で別れた…よ?」

 佳奈がニヤニヤしながら乗り出していた体をもとに戻す。

 奈々ちゃんはそんな佳奈を見ながらサンドイッチを頬張っていた。

 「いいなー、瑞葉に彼氏かー」

 「か、彼氏じゃない!」

 昨日好きだと自覚したものの、先輩が同じ気持ちで居てくれるなんて、そんなことあるわけない。

 先輩にとって私はただの後輩なんだから。

 「えー、でも南雲先輩、瑞葉には優しいじゃん」

 「そんなことないよ。先輩は、きっと私たちが見てないだけで誰にでも優しいはずだよ」

 言っていて胸がいたいけど、絶対そうだ。

 先輩が私にだけ優しいなんてありえない。

 「私はそんなことあると思うけど」

 ずっと聞き役に徹していた奈々ちゃんが言った。

 「実は私ね、南雲先輩と中学から一緒で同じ写真部だったの」

 
 「え!そうなの?」

 「うん。だからね、先輩とはほぼ毎日顔合わせてたけど、基本笑わないし話さないし…。あの体育祭の日、私初めて笑った所見たくらいだもん」

 あれは凄かったと奈々ちゃんがお茶を飲む。

 先輩と奈々ちゃんにそんな接点があったことに驚きだったけど、それよりも、本当に私にだけ優しくしてくれているんじゃないかって勘違いしてしまいそうになる。

 「へぇー、だってさ瑞葉。よかったね」

 「か、佳奈!」

 「ははっ!顔あっかーい」

 「なっ…!」

 顔熱い…。

 きっと私が先輩を好きなこと、二人にはバレてる。

 「何か進展あったら私にも教えてね」

 「ちょっと、奈々ちゃんまでー、」

 私の反応を面白がる二人。

 「頑張ってね、瑞葉!」

 でも、二人は応援してくれている。

 いつか、先輩に思いを伝えられたらいいな。

 それでもし、うまく言ったらきっと、二人は手を取って喜んでくれるだろう。

 二人と友達になれてよかった。

 私はからかう二人をなだめながら、そんなことを思った。