氷の王子は私に優しくしてくれます



 中学二年生の終わり、私は事故に遭った。

 
 居眠りトラックが突っ込んできて、逃げる間もなく、私は宙に飛ばされた。

 
 サイレンの音、救急隊の声。

 
 どれも遠かった。

 
 次に目を覚ましたのは、冬を越えた、中学最後の夏だった。


 友達と、受験前最後にお花見しようって、その約束は果たせなかった。


 枕元に置いてある集合写真。

 
 そこには、私の姿だけがなかった。


 京都の伏見稲荷大社。


 修学旅行も叶わなかった。


 辛いリハビリの日々、置いていかれた授業を取り戻すため暇があれば机に向う。


 その二つだけを必死に頑張った。


 そして…


 「瑞葉!やった!春から一緒の高校だよ!」


 家に来た友達がベッドに座る私を抱きしめる。


 高校ではできなかったことをしたい。


 友達と放課後遊んだり、行事で盛り上がったり、恋愛…したり…


 入口にある、私の大切な体の一部。

 
 不安もある。


 だけど、それよりも、期待で胸が一杯だった。