寛太郎は私にコサージュを付けたときと同じ神妙な面持ちで近づいてきた。
「ねえ、音楽なしでどうやって踊……ひゃっ!」
いきなり抱き上げられ、その場でぐるぐる回られた。
何の心の準備もできていなかった私は抗議する。
「めちゃくちゃだよー!」
「何だっていいんだよ」
寛太郎もいい加減目が回ってきたのだろう。
回転速度が落ちてきて、やがて止まった。
そのまま降ろしてくれるのかと思ったけれど、寛太郎の腕はなぜかゆるまない。
「もうそろそろ離して?」
「嫌だ、離さない。婚約解消なんかしないからな。俺たち結婚するんだ!」
(……‼︎)
一瞬の空白を置いて、私は寛太郎のことを抱きしめ返した。
「うん、うん」
すると寛太郎は、ますます強い力で私を抱きしめた。
寛太郎の腕の中で、悲鳴にも似た黄色い歓声が辺りに響き渡るのを聞く。
(これは、あとで質問責めにされちゃうだろうなあ)
でも、それも楽しい時間の続きになる。
私は確信していた。
END
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