結婚の決め手は焦げた玉子焼き!?黒豹御曹司は愛する秘書を逃がさない

「えっと加賀さんの資料と、あとは新製品の説明資料を」
「……加賀くんと何かあった?」
 喧嘩? と聞いてくれる優しい山﨑にはちゃんと言っておかないと。
 
「フラれちゃいました」
「えぇ? 嘘でしょ?」
「経理に可愛い子が入ったそうです」
 紙袋に引き出しの中身を移しながら沙紀は愛想笑いをする。
 
「……信じられない、加賀の奴。営業成績ナンバーワンは工藤ちゃんのおかげだってわかってないのね」
 帰ってきたら説教だわと言ってくれる山﨑の気持ちが嬉しい。
「営業トークは得意そうですから、彼の実力ですよ」
「そんなことないわよ。工藤ちゃんのわかりやすい資料のおかげで先方も安心して契約をしてくれたのよ」
「だとうれしいですけど」
 愛用のマグカップはタオルに包んで真ん中に。
 文房具と電卓と手帳も紙袋に。
 書類はシュレッダー、クリップとクリアファイルは共有スペースに置いておこう。
 
「そんな奴の資料なんて、自分でまとめさせればいいわ。こっちの新製品の方だけ私が引き継ぐわね」
「ありがとうございます」
 周囲の数人に挨拶した沙紀は、少ない荷物を持ち営業部のデスクを後にした。

     ◇

 秘書課に荷物の移動が完了した沙紀は、なぜか黒くてピカピカな高級車に乗せられた。
 運転手は夏目、後部座席に暁良と沙紀という不思議な座り方だ。
 
「どうぞ」
 夏目に開けられたドアから車を降りると、真正面は女性向けのブティック。
 
 待って、ShineBoutiqueって!
 あのショーウィンドウの服って、有名モデルが雑誌で着ていたやつ!

 隣の店舗は美容室、その隣はネイルサロン。反対側はエステティックサロンだ。
 暁良には縁がなさそうな店ばかりだけれど?
 
「こっちだ」
 キョロキョロしている沙紀を笑いながら、暁良はShineBoutiqueへ。
 
「アキちゃん、いらっしゃ~い」
 マネキンにドレスを着せているマッチョなオネエさん、テレビで見たことある!
 
「任せた」
 暁良に背中をグッと押された沙紀は、慌てて暁良の方を振り返った。
 まさか私の服を買いに?
 私の給料じゃ無理! 絶対無理!