結婚の決め手は焦げた玉子焼き!?黒豹御曹司は愛する秘書を逃がさない

 はじめて参加する経営会議は思ったよりも静かだった。
 なんだかみんな暁良の様子をうかがっているかのようだ。
 CEOが交代してはじめての経営会議だから?
 それとも普段からこういう雰囲気なの?
 
 営業部は予想通り営業部長と大輝だった。
 経理部、企画戦略部、人事部も、部長ともうひとり参加している。
 彼らが各部のエースなのだろうな。

 わからない単語や疑問に思ったことをメモしようとノートを開くと、ここへ来る前に印刷した資料を夏目から手渡された。

「暁良様の質問と回答をここに」
「自分のメモもここに書いていいですか?」
 小声で質問すると夏目が頷いてくれる。
 沙紀は資料に色分けして書き込むことにした。

「営業、通期見通しは?」
「概ね計画通り、若干前倒しで受注しています」
 営業部長は早めに受注できるように積極的に営業に出ろと言っていたけれど、この場で「未達」なんて言えないからですね。
 やっと苦労がわかりました。
 営業部にいるときは、そんなこと言われても、お客さん次第でしょ。って思っていてごめんなさい!

「経理、予算消費状況は?」
「はい。設備投資の追加依頼が……」
「3番目と4番目は本当に必要か精査しろ」
 暁良もすごい。
 この資料でどうしてそんなことまでわかるの?
 私は案件名を見ても物がわからないのに。

「開発、特許を確認した方がいい」
「すぐ確認します!」
 おそらく類似があると暁良が指摘すると、開発部長は顔面蒼白になった。
 
 沙紀の手元の資料にはマーカーのラインがある。
 夏目さんが引いたライン!
 特許まで調べたの? いつの間に?
 これも秘書の仕事?
 嘘でしょ!

 一時間の会議で沙紀の脳は焦げそうだった。
 秘書って過酷……!
 沙紀は書き込みだらけになった資料を見ながら項垂れた。

 会議が終わり、暁良が席を立つ。
 先回りした夏目が扉を開け、暁良を通し、沙紀も後に続いた。

「沙紀!」
 こんな場所で、このメンバーの前で、苗字ではなく名前を呼ぶなんてどうかしている。
 呆れながら、沙紀はピタリと足を止めた。