結婚の決め手は焦げた玉子焼き!?黒豹御曹司は愛する秘書を逃がさない

 東京に戻るとすぐに暁良の祖父である前CEOの宗一郎様に報告。
 この時初めて、暁良の両親が他界していることを知った。
 とんとん拍子に話が進み、出会ってからたった11日で私は暁良の『婚約者』になった――。

 それから五日後には株主総会が行われ、賛成多数で暁良がCEOに。
 大きな混乱もなく、会社のCEOは交代となった。
 
   ◇
 
 会社のエントランス真正面に乗りつけた黒塗りの高級車。
 後部座席のドアを開けてくれる夏目に、沙紀は軽くお辞儀をした。
 
 コツコツコツと高い音が鳴る新品のヒール。
 ストッキングの美しい光沢でスッキリ細く見える足首。
 マーメイドタイトスカートに、ウエストが細く見えるデザインのジャケット。
 清楚な白いブラウスにブランドのスカーフ。
 首元には主張しすぎないダイヤモンドのネックレス、そしてお揃いの揺れるイヤリング。
 
 片編み込みで顔周りをすっきりさせたゆるふわの髪に、高級ブティックのオーナー、ルルの直伝メイク術。
 手にはブランドバッグ、手首にはさりげなく高級時計。
 別人のように変身した沙紀と、その隣を歩く長身の見知らぬ男性。
 出社してきた従業員たちは思わず足を止めた。
 
「本日10時から臨時役員総会。13時から社内説明会。14時半からテンコー社の会長と帝国ホテルのラウンジで打ち合わせ。18時からは銀座で会食の予定となっております」
「わかった」
 暁良の姿を見た警備員が慌てて自動ドアを開け、お辞儀する。
 
「あれ誰?」
「カッコいい!」
 偶然居合わせた女性社員たちの黄色い声が飛び交う。

「え……? 誰、あのイケメン!」
 駅から歩いてきた心愛は、この会社では見たことがない極上のイケメンの姿に目を見開いた。
 
「負け犬のくせに、大輝よりいい男と一緒にいるなんて許せない!」
 せっかく営業部のエースを寝取ったのに、あんなの反則でしょ。
 私が一番いい男を連れ歩くはずなのに!
 
 心愛はイケメンの写真をスマホで撮ると、同期の女の子に「この人誰?」とメッセージを送信した。
 すぐに「誰なの? カッコよすぎる」と返事が返ってくる。
 心愛はイケメンの姿が見えなくなるまで目で追いかけた。

 大輝より背が高く、たくましい。
 洗練されたスーツはきっと高級品。少し長めの黒い前髪は少しくせ毛で、高く通った鼻筋も素敵。
 存在そのものが、周囲の風景を一変させる絶対王者の雰囲気。
 
「あはっ。また取っちゃえばいいんだ」
 私の方が可愛いし、若いし。

「私の方がイケメンにふさわしいも~ん」
 心愛は隠し撮りを待ち受けにすると、ウキウキしながらセキュリティゲートをくぐった。