結婚の決め手は焦げた玉子焼き!?黒豹御曹司は愛する秘書を逃がさない

 今日はこれから合コン。
 少し早めに家を出て、最近話題の映画や食べ物をリサーチしようと思ったのに。
 偶然見かけた沙紀は男連れ。
 相手の男の顔は見えなかったが、背が高い男だった。
 
 昨日別れたばかりなのに、もう遊びに行く男がいるのかよ。
 泣きながら縋りついてくるかと思ったのに。
 大輝はチッと舌打ちすると、合コンの店へと歩いて行った。

    ◇

「まさかあんな結末なんて」
 顔全体を覆い尽くしそうな大きいハンドタオルで目元を押さえながら、沙紀は暁良と映画館を後にした。
 映画は予告を上回る内容で、ハラハラドキドキの連続。
 最後はまさかの悲恋と思わせておきながら、どんでん返しでハッピーエンドだ。

「見てよかった〜〜」
「映画、好きなのか?」
「よく会社帰りにひとり……」
 ひとりで見に来ていたと言いそうになった沙紀は目を伏せた。
 映画に金を払うなんてもったいないと大輝に言われたことをなぜか急に思い出してしまったからだ。
 
「また観よう」
 暁良は興味がない内容のはずなのに、チケットも買ってくれて、寝ることもなく一緒に映画を楽しんでくれた……?
 
「家でも好きなものを見ればいい」
「あの大きな壁のスクリーンで?」
「あぁ。映画ばかり放送しているチャンネルがあったはずだ」
 有料チャンネル!
 
「いつでも観ていいのですか?」
「あぁ、もちろん。敬語を辞めたらな」
 普段は彫刻のように冷たい顔なのに、急に笑うなんてズルすぎる。
 契約上の婚約者なのに優しすぎでは?

「食事はどこに……」
「沙紀!」
 暁良の声に被せるようなタイミングで、急に名前を呼ばれた沙紀は驚いて振り返った。

 目の前には今、一番会いたくない男。
 普段よりもお洒落しているので、新しい彼女とデートなのかと思ったが、なぜか彼女の姿はなかった。