忘れられなかった初恋が、40歳で叶ってしまった

「胡桃、可愛いね。いつまでサンタさん信じてくれるかな」

信一が愛しそうに胡桃の寝顔にキスをすると、枕元にそっとプレゼントを届けた。

今年のクリスマスプレゼントはニンテンドーSwitch。胡桃が2年ほど前から欲しがっていたSwitch。絵奈も買ってあげるよう信一にお願いしていたが、信一はなかなか首を縦にはふらなかった。

一か月ほど前に、胡桃がSwitchが原因で友達から仲間外れにされかけた事がきっかけで、ようやく頑固な信一の許可がおりたのだ。

(本当に、古風というか、頑固というか…。)
パパサンタの様子を見ながら、絵奈はため息をついた。


「ハイ、絵奈にもこれ、プレゼント」
「わぁ、ありがとう!」

コーチの上品な財布だ。
「え、こんな高いプレゼント、良いの?胡桃のSwitchも買ったのに…。でも素敵!信ちゃんありがとう!」

「絵奈のイメージに合うかなと思って。絵奈、いつもありがとう。」

うちは、そこまで裕福ではない。普通のサラリーマンの信一と、パート主婦の絵奈。今後家を買う為の貯金、保険、これから胡桃の習い事、受験等を考えると、無駄遣いは極力避けるよう、絵奈は絶えず努力していた。

「信ちゃん、私からのプレゼントこれ。安物だけど、ごめんね」

絵奈は紳士服のアウトレットで購入した手袋を渡した。

「わぁ!手袋欲しかったんだ!凄く嬉しいよ。絵奈、ありがとう。」

信一は絵奈を抱きしめキスをすると、そのままシャツのボタンに手をかける。
信一の愛情を受けながら、絵奈は考えた。

(コーチのお財布の値段、いくらしたんだろう?Switchの出費と合わせると合計5、6万くらいになってしまうのだろうか…?私は4000円くらいに抑えたのにな…)

頭の中ではお金の計算をしながら、絵奈は信一と抱きしめ合い、愛情深く繋がっている。これが真実の愛なのか、それとも偽りの愛なのか、絵奈自身もよく分からない。

ただ不倫の定義としては、この行為があるかないかで判断される。

絵奈は自分が行為に集中していないのを信一に悟られないため、精一杯自分を演出してみせた。