忘れられなかった初恋が、40歳で叶ってしまった

祐太郎と再会した翌日、絵奈は胡桃を学校へ送りひと通りの家事をこなした後、かれこれ30分近くスマホと睨めっこしている。

やはり、ラインしないのは駄目。身内のコネで写真を撮ってもらい、サインまで頂いたのだからお礼しないと失礼だ!

絵奈は昔の同級生に対して失礼のないように文章を書いては消して、書いては消して、を繰り返す。
あまり馴れ馴れしくするのも良くないし、当たり障りなく…。

【昨日は写真とサイン、ありがとうございました。まさかの再会に驚いたね!
お兄様、陽菜ちゃんにもお礼をお伝えください。胡桃もとても喜んでおりました。】

これが一番良い!でもちょっとまって、なんか逆に他人行儀すぎるかなぁぁ…

絵奈が送信ボタンを押すのをためらっていると、スマホのバイブと共に一通のラインが届いた。
祐太郎だ。


【昨日は久々に大崎に会えて驚いた!娘さんかなり喜んでたね。最近の女子はやはり推し活か(笑)
あ、もう大崎じゃないかな?】

え?これは、ラリーが続きそうな。。
まぁいっか、名字くらい。

25分後に絵奈は返信をした。
【上岡君、昨日はありがとうございました。娘もかなり喜んでいました。お兄様、陽菜ちゃんにお礼をお伝えください。
今は「赤木」になりました!大崎と久々に呼ばれて新鮮でした(笑)】

【女子は名字変わるもんね】

絵奈は何て返信して良いのか分からず「それな」のスタンプを送った。




それ以降、祐太郎とのラインは途絶えてしまった。




短い春だった。
でもこれが正解だ。祐太郎にラインして、何か関係を持とうとするのは間違っている。
用もないのにわざわざラインで繋がったとしても、心の平穏が乱れるだけだ。

昔の気持ちなんて。

これ以降、レジェンガの試合では上岡選手を目で追うようになるくらいで生活に何一つ変化は無かった。

夫との仲も今まで通り上手くやれている。触れられるのが嫌なのもすぐに終わった。