試合開始の合図が始まると、胡桃は夢中で二階堂選手にエールを送る。
絵奈も今までは娘に釣られて二階堂選手を目で追っていたが、今は上岡選手が気になる。
まさか、祐太郎君の弟さんだったとは。
改めて上岡選手を見てみると、祐太郎にはあまり似ていない。目元はよく似ているが体格とか雰囲気は全然違うので、うちの姉妹と一緒だなと思って、絵奈は思わずニヤついた。
しかし久々の再会に驚いたな。15年ぶりくらいだ。地元を離れてだいぶ経つし、同窓会なんかも開催されてるのかすら分からない。
祐太郎君は、今回弟さんの試合観戦だったのだろうか?姪子さんだけ連れてたけど、子供は居るのだろうか?
…そんな人様のプライベートなんて考えても意味がない!
絵奈は頭を切り替え、娘と共に大声で二階堂選手を応援した。
試合終了後、祐太郎にラインするとは言ったものの「サイン欲しいんだけどどこで待ってたらいい?」なんて図々しくて送れずに一生懸命失礼の無い文章を考えていると、祐太郎の方からラインが入った。
【レジェンガ勝利したね!さすが俺の弟のチーム(笑)一階の自販機のところで待ってて。】
「胡桃、サイン貰えそう!一階の自販機だって」
「サインだけじゃなく写真もね!」
「……」
生意気な娘の返答をスルーし約束の場所へ向かうと、祐太郎と陽菜が待っていた。
「祐太郎君、陽菜ちゃん、ほんとありがとう!」
「弟も同じ地元って言ったら喜んでたよ!こっち来て」
絵奈と胡桃は初めて通る関係者専用入り口を恐る恐る通ると、そこには勝利ではしゃいでいるレジェンガメンバーが勢揃いだ。
二階堂選手がすぐさまこちらに気付くと、眩しい笑顔で手を振ってくれた。
「キミ、さっき応援してくれた子だ!ありがとう。お陰で勝てたよ!上岡さんの知り合いなの?サインしてあげる!」
「あ、ハイ…、えっと…」
緊張で固まってしまった胡桃の代わりに、絵奈がサインをもらい、ツーショットはどうにか胡桃だけで撮らせた。
「ありがとうございます!二階堂選手のさっきのスリーポイント素敵でした!」
胡桃は声を震わせながら二階堂にお礼を伝えると、二階堂に握手までしてもらい大満足の様子だ。
その時、後ろから上岡選手が顔をのぞかせた。

