忘れられなかった初恋が、40歳で叶ってしまった

「ママ、可愛い…!」

胡桃が目を輝かせながら、ショートボブで若々しいなった母親を凝視する。

「すごくイメージ変わったね。似合ってる!服も買ったの?」
信一も絵奈の変化に驚きを隠せない様子だ。

「そうなの!会社の女の子の影響でね、髪型とか服とか、真似しちゃった!若造りだけど!いつもよりお金使っちゃったけど、、良いよね…?」

「もちろん良いよ。ママも好きな物にもっとお金使っていいんだよ?」
「信ちゃん…!ありがとう!」

本当に信一は、優しい。

普通、妻が急にイメチェンして数万円分の服を買い込んできたら、不快を露わにしたり、若造りだの似合わないだの文句を言ったり、金額の事をネチネチ言ったりする旦那がほとんどだと思う。

でもね、信ちゃん。今回の本当のイメチェンの理由は、中野さんだけじゃなくて、祐太郎君と会うためなの。

逆に、ネチネチと文句を言われてる方が精神的に楽なような気もする。
信ちゃんが完璧な「器の広さ」を披露するからこそ、裏切り行為の罪深さが助長される。

「その髪型、似合ってない。服も今の服、まだ着れるのに何で買ったの?勿体無い。」
信ちゃんがそんな風に言ってくれたら、私は躊躇なく祐太郎君に泣きつくことが出来るのに。
「心の拠り所」という名目で、祐太郎にどっぷり依存できるのに。

でもごめん。そんな言い訳は不要なくらい

私は、祐太郎君にもう一度、会いたいんだ。

一線は、超えない。
でも、忘れかけてた甘酸っぱい思い出に、もう少しだけ浸ってみたい。

次会ったらまた次回も、ってなって、泥沼化するのだろうか。
ただもう、未来の事なんて考えられないほど私は、祐太郎君に恋をしている。

40過ぎてこんな思いするなんて思ってもいなかった。

胸が高鳴る高揚感に私は、

踊らされる

という選択を取った。