数分後、改札を抜けた祐太郎が絵奈を見つけると、よっと手を振ってくれた。
スーツ姿もかっこいい。
絵奈も笑顔で手を振った。
「まさかこっちでも会うなんて偶然だねー!仕事納めお疲れ様!」
絵奈は飛び出しそうな心臓を抑え込み、どうにか平静を装うため、主婦スキルで培った「当たり障りの無い会話」で自分をガードするよう努める。
「ほんと皆おとといくらいから休みなのにさ、辛いねー。大崎1人?暇ならメシ行かない?」
メ、メシですか??わたし今から実家で家族とメシなんですけど。。
「えっと、、」
「あ、ごめん、大崎じゃないよね。赤木さん。。ふっ、悪いけどスラダンのゴリが頭をよぎる。絵奈でいいよね。」
祐太郎君お願いです…、ファーストネームで呼ばないで…。赤木さんって呼んでください。
「確かに、ゴリと同じだね。スラダン懐かしい!うん、絵奈でいいよ。ご飯かー、遅くならなければ大丈夫だよ!私もお腹空いてたんだよね!」
2人が入ったのは、チェーンの個室居酒屋。
若いアルバイトであろう店員が流れ作業のごとく2人を適当な席に通した。
周りは威勢のいい若い客ばかりで、アラフォーの祐太郎と絵奈は場違い感が否めない。
「ここの店さ、昔同窓会で来たの覚えてる?」
「え?そうなの?全然覚えてないや」
「あー、まぁ絵奈、結構飲んでたからね」
「そうかな、、こっち離れてだいぶ経つからさ、久々に帰ると色々店が変わってて分からなくなるんだ」
祐太郎の誘いに乗って居酒屋に入ったものの、本当はお腹は空いていないわ、緊張するわ、既婚者の罪悪感はあるわ、絵奈の態度はぎこちない。
「絵奈、緊張してる?昔はもっと馬鹿みたいだったのに大人になったな、お互い様かなー」
ビールを飲み干した祐太郎が、絵奈に物申した。
「そりゃ、そうだよ!もう私達40だよ?馬鹿ばっかやってらんないでしょ」
「俺は、馬鹿みたいな絵奈が好きだったけど?大人になったからって馬鹿辞めないといけないのかねぇ」
え…?今の告白?
「ちょっとゆ、祐太郎君!既婚者に対して『好き』はないでしょ!」
「待ってお前、考えすぎじゃん!普通に人間として昔の絵奈の方が喋りやすかったなーって思ったから言っただけだよ!もしかして俺の事好きなの??」
「はぁ??えっとねぇ、6年の頃なんて女子なら全員、祐太郎の事一回くらいは好きになった事あるんじゃない?あなたモテたからなーー」
祐太郎は苦笑いしながら答えた
「やっぱ大崎さんオモロいなぁ」
祐太郎にからかわれて絵奈も複雑な気持ちだ。もしかしたらこの人は、本当に今日暇で私をおちょくって暇つぶしするためにご飯に誘ったのかも。
「で、今の俺ってどう思う?教えて?絵奈さん」
「今?まぁまぁイケオジなんじゃない?スイミングスクールのコーチには負けるけど笑」
「コーチってだれだよ。そっか、まぁ確かにまだ若い女子とかにもカッコいいって言われるからなぁ」
…理解した。馬鹿なのは祐太郎君の方だ。
この前バスケの試合の時は、姪っ子の手前「大人」な叔父さんを演出してただけだ。あ、それは私も同じか…
「祐太郎君、若い女の子にとって、そんなおじさんキモがられるからマジでやめな?もっと謙虚にいかないと!」
祐太郎はまた意地悪そうにニヤついた
「うん、若い女子にはこんな事言うわけないじゃん?」
…
「ちょっと待って、祐太郎君、いくら同級生だからってねぇ、そんな事言わないでよぉ。。こんな酷い事言われるならご飯なんか行かなきゃ良かった…」
絵奈は酒も入ったためか、「若い女子と比べておばさん」の事実を突きつけられ、涙が溢れてきてしまった。
「え、絵奈、ごめん!このおしぼり…」
「やだもう、化粧が落ちてさらにおばさんに見えるからさぁ、こっち見ないでよぉ…てゆうかオマエのおしぼりわたすなよ!」
「…化粧、全然変わんないけど…」
「うるさいなぁ、祐太郎のばかーーー」
通行人がチラチラこちらを見てくる。
側から見たら、不倫の別れ話をしている中年カップルにしか見えないだろう。
絵奈が泣いてる間ずっと、祐太郎は絵奈の手を握ってくれた。
「と、取り乱してごめん。私も小さい事で大人げなかった。そろそろ実家帰らないと。会えて嬉しかったよ。」
2人は割り勘で会計すると、駅へ向かった。
絵奈がタクシーを呼ぼうと手を上げた瞬間、祐太郎は絵奈の手を掴んで、抱きしめた。
「祐太郎君?」
「ずっと好きだったんだ。絵奈の事」
絵奈は頭が真っ白になった。
「ちょっと待って、今日さんざんいじっといて何なの。もうやめてよ」
「違うってば。昔からの気持ちだよ。同窓会の時から、ずっと好きだったよ」
祐太郎は絵奈の瞳を見つめた。
嘘じゃないって、わかる。けれど今はお互い既婚者子持ちだ。リスクが大きすぎる。
「…こんな事、思っても言わないよ。これが既婚者でしょ?」
「絵奈、俺のことどう思う?」
「さっき言った。今でもかっこいい、イケオジだと思う」
「見た目の話じゃなくて、俺のこと。どう思う?」
「普通に好きだけど」
「なんだよ普通にって!素直じゃねぇな」
「だから既婚者なんだからいちいち本音で話してたら拉致があかないというか、、」
「めんどくさ!」
祐太郎は絵奈の話を遮るように、唇を奪った。
呆気に取られる絵奈に、祐太郎はさらに追い討ちをかける。
「前みたいに好きって言ってよ」
「前みたいに??」
「同窓会でめっちゃ好きって言ってくれたじゃん?」
スーツ姿もかっこいい。
絵奈も笑顔で手を振った。
「まさかこっちでも会うなんて偶然だねー!仕事納めお疲れ様!」
絵奈は飛び出しそうな心臓を抑え込み、どうにか平静を装うため、主婦スキルで培った「当たり障りの無い会話」で自分をガードするよう努める。
「ほんと皆おとといくらいから休みなのにさ、辛いねー。大崎1人?暇ならメシ行かない?」
メ、メシですか??わたし今から実家で家族とメシなんですけど。。
「えっと、、」
「あ、ごめん、大崎じゃないよね。赤木さん。。ふっ、悪いけどスラダンのゴリが頭をよぎる。絵奈でいいよね。」
祐太郎君お願いです…、ファーストネームで呼ばないで…。赤木さんって呼んでください。
「確かに、ゴリと同じだね。スラダン懐かしい!うん、絵奈でいいよ。ご飯かー、遅くならなければ大丈夫だよ!私もお腹空いてたんだよね!」
2人が入ったのは、チェーンの個室居酒屋。
若いアルバイトであろう店員が流れ作業のごとく2人を適当な席に通した。
周りは威勢のいい若い客ばかりで、アラフォーの祐太郎と絵奈は場違い感が否めない。
「ここの店さ、昔同窓会で来たの覚えてる?」
「え?そうなの?全然覚えてないや」
「あー、まぁ絵奈、結構飲んでたからね」
「そうかな、、こっち離れてだいぶ経つからさ、久々に帰ると色々店が変わってて分からなくなるんだ」
祐太郎の誘いに乗って居酒屋に入ったものの、本当はお腹は空いていないわ、緊張するわ、既婚者の罪悪感はあるわ、絵奈の態度はぎこちない。
「絵奈、緊張してる?昔はもっと馬鹿みたいだったのに大人になったな、お互い様かなー」
ビールを飲み干した祐太郎が、絵奈に物申した。
「そりゃ、そうだよ!もう私達40だよ?馬鹿ばっかやってらんないでしょ」
「俺は、馬鹿みたいな絵奈が好きだったけど?大人になったからって馬鹿辞めないといけないのかねぇ」
え…?今の告白?
「ちょっとゆ、祐太郎君!既婚者に対して『好き』はないでしょ!」
「待ってお前、考えすぎじゃん!普通に人間として昔の絵奈の方が喋りやすかったなーって思ったから言っただけだよ!もしかして俺の事好きなの??」
「はぁ??えっとねぇ、6年の頃なんて女子なら全員、祐太郎の事一回くらいは好きになった事あるんじゃない?あなたモテたからなーー」
祐太郎は苦笑いしながら答えた
「やっぱ大崎さんオモロいなぁ」
祐太郎にからかわれて絵奈も複雑な気持ちだ。もしかしたらこの人は、本当に今日暇で私をおちょくって暇つぶしするためにご飯に誘ったのかも。
「で、今の俺ってどう思う?教えて?絵奈さん」
「今?まぁまぁイケオジなんじゃない?スイミングスクールのコーチには負けるけど笑」
「コーチってだれだよ。そっか、まぁ確かにまだ若い女子とかにもカッコいいって言われるからなぁ」
…理解した。馬鹿なのは祐太郎君の方だ。
この前バスケの試合の時は、姪っ子の手前「大人」な叔父さんを演出してただけだ。あ、それは私も同じか…
「祐太郎君、若い女の子にとって、そんなおじさんキモがられるからマジでやめな?もっと謙虚にいかないと!」
祐太郎はまた意地悪そうにニヤついた
「うん、若い女子にはこんな事言うわけないじゃん?」
…
「ちょっと待って、祐太郎君、いくら同級生だからってねぇ、そんな事言わないでよぉ。。こんな酷い事言われるならご飯なんか行かなきゃ良かった…」
絵奈は酒も入ったためか、「若い女子と比べておばさん」の事実を突きつけられ、涙が溢れてきてしまった。
「え、絵奈、ごめん!このおしぼり…」
「やだもう、化粧が落ちてさらにおばさんに見えるからさぁ、こっち見ないでよぉ…てゆうかオマエのおしぼりわたすなよ!」
「…化粧、全然変わんないけど…」
「うるさいなぁ、祐太郎のばかーーー」
通行人がチラチラこちらを見てくる。
側から見たら、不倫の別れ話をしている中年カップルにしか見えないだろう。
絵奈が泣いてる間ずっと、祐太郎は絵奈の手を握ってくれた。
「と、取り乱してごめん。私も小さい事で大人げなかった。そろそろ実家帰らないと。会えて嬉しかったよ。」
2人は割り勘で会計すると、駅へ向かった。
絵奈がタクシーを呼ぼうと手を上げた瞬間、祐太郎は絵奈の手を掴んで、抱きしめた。
「祐太郎君?」
「ずっと好きだったんだ。絵奈の事」
絵奈は頭が真っ白になった。
「ちょっと待って、今日さんざんいじっといて何なの。もうやめてよ」
「違うってば。昔からの気持ちだよ。同窓会の時から、ずっと好きだったよ」
祐太郎は絵奈の瞳を見つめた。
嘘じゃないって、わかる。けれど今はお互い既婚者子持ちだ。リスクが大きすぎる。
「…こんな事、思っても言わないよ。これが既婚者でしょ?」
「絵奈、俺のことどう思う?」
「さっき言った。今でもかっこいい、イケオジだと思う」
「見た目の話じゃなくて、俺のこと。どう思う?」
「普通に好きだけど」
「なんだよ普通にって!素直じゃねぇな」
「だから既婚者なんだからいちいち本音で話してたら拉致があかないというか、、」
「めんどくさ!」
祐太郎は絵奈の話を遮るように、唇を奪った。
呆気に取られる絵奈に、祐太郎はさらに追い討ちをかける。
「前みたいに好きって言ってよ」
「前みたいに??」
「同窓会でめっちゃ好きって言ってくれたじゃん?」

