「あら? 雨だわ」

 母の嬉々とした声が聞こえる。


 だんだんと母の声が、遠く、遠くなる。


 雨の音しか聞こえない……。



 ――神凪、の、声、


 「あの日以来だな」


 ――花の、雨……


「そう。それはおれの異能――“神隠しの誘い水”って呼ばれるものだ。感染したものは“忘れてゆくんだ、ゆっくり”すこしずつすこしずつ内側が、削られてゆく。でも自分じゃ気づかない。何かがおかしいとして、病院でも治せない――人では、な」


 ――え? なんて、言ったの?


「忘れてゆくから、続きは覚えてられないか。まあ、ずいぶんと馴染んだもんだ。一緒に、雨宿りしないか。大丈夫、おれがずっとそばにいてやる」


――沙羅の木の花のように、まっしろな手が、のばされる


この手をとれば、もう、 、 、



「依存は美しい。永遠に壊れない絆だ」






――思考が停止する。………… ……………………