明と蒼が変装を解き、本来の姿があらわになる。
少女はその姿に目を輝かせた。
「きれい…」
「おや、竜人を見るのは初めてですか?」
「わたし、あんまりしらなくて…」
「…」
「?」
「あ、すみません。では行きましょう。」
「は、はい!」
翼を広げ、天高く飛び立った。
少女は蒼に抱えられながら、自分たちの目の前を飛ぶ明を見た。
「かっこいい…」
蒼にも届かないか細い声。
そこから少女は蒼の腕の中で静かに眠った。
ー少女が目を覚ますと、既に朝日が昇っていた。
「ここは…?」
「起きたのか。」
「!?」
「悪い、驚かしたな。傷は一通り手当させてもらった。しばらくすれば治るだろう。」
「あ、ありがとうございます…。」
「…ここは竜人族の縄張りだ。」
「ここが、、」
「気になるだろうが、まずは飯を食ってからだ。」
「は、はい。」
「そんなに怯えるなって方が無茶か。先に自己紹介をしておく。俺は竜人族当主、明だ。」
「明さん?」
「さん付けするな、明でいい。」
「え、でも…。」
「これは命令だ。」
「はい…。」
ガチャ
「まったく、あなたという人は…どうしてそんな言い方しかできないのでしょう?」
「黙れ。」
蒼はやれやれという感じである。
「ぐっすり眠れましたか?」
「あ、はい!」
「改めまして、蒼といいます。この不器用当主とは幼馴染で、現在は側近です。」
「誰が不器用だ!」
「どう考えてもそうでしょう?」
「くっ!」
「それであなたのお名前を聞いてもいいですか?」
「あ、えっと…わたしはミコトです。」
「ミコトさんですね。あなたも獣人ですか?」
「はい、オオカミです…。」
「オオカミ?この辺りに生息しないだろ?」
「…」
ミコトは静かに俯いた。
「無理強いはしません。最初にも言った通り、必ずあなたをオオカミの里に帰してみせます。」
ミコトは蒼の言葉に頷くことしかできなかった。
ーミコトが寝たのを確認し、蒼は明のもとへ向かった。
「明」
「蒼か、どうした?」
「何を考えているのですか?」
「蒼」
「はい」
「お前はこの国をどう思う?」
「一言でまとめると詐欺師、ですかね。あなたは?」
「滅べばいいと思う。」
「物騒ですね?」
「こんなに上手くいってるのも今だけだ。いずれ必ずボロが出る。」
「それはそうですが…」
「何より、あんな子どもまで商品として扱ってるような国に、民衆を導く資格なんざねぇ!」
「明、落ち着いてください。ミコトさんが起きてしまうでしょう?」
「あいつだって、捕まってなきゃ幸せのはずだったんだ…自らの欲望のために誰かの幸せを踏みにじる、そんな人間が俺は憎い。」
「それは私も同じ考えです。しかし、今はそれよりも彼女を里に帰すことが最優先です。」
「わかってる。怪我が治り次第、里に向かう。」
「御意」
翌日、ミコトは竜人族の縄張り…里を案内された。
「わぁ…すごい!!」
「竜人族は地上と空中の両方で生活します。空を飛んで自由気ままに過ごす者もいれば、人間の姿に変装して緊急時に備える者もいます。それぞれの個性がありとあらゆる場所に散らばっているんですよ。」
「すごいですね…自由でいいな、、。」
「お前だってもう自由だ。」
「え?」
「ここにいる間は、俺が安全を保障する。オオカミの里に着いてからも、何かあれば助けになる。」
「明…」
「はい、ここで出会ったのも何かの縁です。お互い協力していきましょう。」
「蒼さん…」
ミコトの瞳から涙が溢れる。
「お、おい…なんで泣くんだよ…。」
「ごめ…なさ、、うれしくて…。もう、だれも…たすけてくれないと、、おもってたから…。」
明は衝動でミコトを抱きしめた。
「あきら…?」
「大丈夫だ。お前は俺たちが守る。」
「うぅ……ありがとう、、」
しばらくして、ミコトが泣き止んだ。
「落ち着きましたか?」
「はい、ごめんなさい…変なところ見せちゃって。」
「気にするな。故郷が恋しくなるのは当たり前だ。」
「ふふっ。」
「なんだ?」
「明ってやっぱり優しい…///」
ミコトはほんのり頬を赤く染めている。その変化に鈍感な男が気づくわけはない。
「そんなことねぇ。俺じゃなくても同じこと考えるさ。」
「はぁ…明、そういうところは盲点ですよね。」
「あ?何の話だ?」
「いえ、何でもありません。鈍感なあなたに何を言っても伝わる気がしませんから。」
「はぁ?」
「ミコトさん、戻りましょうか♪」
「はい!」
「あ、おい!ちょっと待て!!」
疑問を抱く明をよそに、蒼とミコトは部屋へ戻って行った。
ーそれから竜人族と交流したり、勉強したりしてるうちに数週間が経過し、ミコトの怪我もだいぶ良くなってきた。
「痛みはどうですか?」
「もう大丈夫です。色々とありがとうございました。」
「確かに怪我は完治していますね。では、里に戻る手はずを整えましょう。」
「はい!」
怪我が治るまでの間で、ミコトはかなり元気を取り戻した。もとはかなり活発な子なのかもしれない…蒼はそう感じていた。
「明」
「わかってる。ただ、その前に始末しねぇといけない連中がいやがる。」
「え?」
「…やはり来ましたか。」
「あぁ。」
「あ、あの、だれが…」
「オークションを主催してた連中だ。こんなところまで追ってきやがったのか。」
明が行こうとすると、蒼が止めに入る。
「明、待ってください。」
「なんだよ?」
「まさか直接出向く気じゃないでしょうね?」
「俺が仕留めるのが一番速いだろ。」
「そういう問題ではありません。ここは私に任せてください。」
「は?」
「あなたの事情は、私が一番よく知っています。私があなたの前からいなくなることはありません、、なのであなたはミコトさんと一緒にここで待っててください。」
「ふざけんな!」
「明」
蒼が背筋が凍てつくほど落ち着いた声で呼ぶ。
「あなたを失うことを、私は一番恐れているのですよ。わかってくれますね?」
「…わかった。今回はお前に任せる。ただ、、」
「?」
「死ぬことは許さん。」
「もちろんです。私がいなくなったら、誰があなたを止めるんですか?」
「…行け。」
「仰せのままに。」
蒼は瞬時に奴隷商人たちを返り討ちに出た。
「蒼さん、大丈夫でしょうか…」
「アイツは強い、、心配いらない。」
そう言う明も、身体が小刻みに震えていた。
「(この人は、何に恐れているんだろう…)」
ミコトは明を励まそうと、明の手を取る。
「おい…」
「私も、こうしてもらった方が落ち着くから。」
「バカが、、、俺のことなんて気にするな。」
「私がしたいから!救ってもらったあなたを放っておけない。」
「…」
明はミコトの手を握り返し、静かに蒼の戻りを待った。
しばらくして、扉が開かれた。
「蒼さん!」
「ただいま戻りました。」
見たところ外傷もない…ミコトは安堵の笑みを浮かべた。
「怪我はないか?」
「見ての通り、かすり傷1つありませんよ。」
蒼が明に優しく微笑む。その笑顔に明も安堵しているようだった。
「それでは、ミコトさんをオオカミの里に送り届けましょう。」
「あぁ。ミコト、明日の早朝出発するから準備しとけ。」
「はい!」
少女はその姿に目を輝かせた。
「きれい…」
「おや、竜人を見るのは初めてですか?」
「わたし、あんまりしらなくて…」
「…」
「?」
「あ、すみません。では行きましょう。」
「は、はい!」
翼を広げ、天高く飛び立った。
少女は蒼に抱えられながら、自分たちの目の前を飛ぶ明を見た。
「かっこいい…」
蒼にも届かないか細い声。
そこから少女は蒼の腕の中で静かに眠った。
ー少女が目を覚ますと、既に朝日が昇っていた。
「ここは…?」
「起きたのか。」
「!?」
「悪い、驚かしたな。傷は一通り手当させてもらった。しばらくすれば治るだろう。」
「あ、ありがとうございます…。」
「…ここは竜人族の縄張りだ。」
「ここが、、」
「気になるだろうが、まずは飯を食ってからだ。」
「は、はい。」
「そんなに怯えるなって方が無茶か。先に自己紹介をしておく。俺は竜人族当主、明だ。」
「明さん?」
「さん付けするな、明でいい。」
「え、でも…。」
「これは命令だ。」
「はい…。」
ガチャ
「まったく、あなたという人は…どうしてそんな言い方しかできないのでしょう?」
「黙れ。」
蒼はやれやれという感じである。
「ぐっすり眠れましたか?」
「あ、はい!」
「改めまして、蒼といいます。この不器用当主とは幼馴染で、現在は側近です。」
「誰が不器用だ!」
「どう考えてもそうでしょう?」
「くっ!」
「それであなたのお名前を聞いてもいいですか?」
「あ、えっと…わたしはミコトです。」
「ミコトさんですね。あなたも獣人ですか?」
「はい、オオカミです…。」
「オオカミ?この辺りに生息しないだろ?」
「…」
ミコトは静かに俯いた。
「無理強いはしません。最初にも言った通り、必ずあなたをオオカミの里に帰してみせます。」
ミコトは蒼の言葉に頷くことしかできなかった。
ーミコトが寝たのを確認し、蒼は明のもとへ向かった。
「明」
「蒼か、どうした?」
「何を考えているのですか?」
「蒼」
「はい」
「お前はこの国をどう思う?」
「一言でまとめると詐欺師、ですかね。あなたは?」
「滅べばいいと思う。」
「物騒ですね?」
「こんなに上手くいってるのも今だけだ。いずれ必ずボロが出る。」
「それはそうですが…」
「何より、あんな子どもまで商品として扱ってるような国に、民衆を導く資格なんざねぇ!」
「明、落ち着いてください。ミコトさんが起きてしまうでしょう?」
「あいつだって、捕まってなきゃ幸せのはずだったんだ…自らの欲望のために誰かの幸せを踏みにじる、そんな人間が俺は憎い。」
「それは私も同じ考えです。しかし、今はそれよりも彼女を里に帰すことが最優先です。」
「わかってる。怪我が治り次第、里に向かう。」
「御意」
翌日、ミコトは竜人族の縄張り…里を案内された。
「わぁ…すごい!!」
「竜人族は地上と空中の両方で生活します。空を飛んで自由気ままに過ごす者もいれば、人間の姿に変装して緊急時に備える者もいます。それぞれの個性がありとあらゆる場所に散らばっているんですよ。」
「すごいですね…自由でいいな、、。」
「お前だってもう自由だ。」
「え?」
「ここにいる間は、俺が安全を保障する。オオカミの里に着いてからも、何かあれば助けになる。」
「明…」
「はい、ここで出会ったのも何かの縁です。お互い協力していきましょう。」
「蒼さん…」
ミコトの瞳から涙が溢れる。
「お、おい…なんで泣くんだよ…。」
「ごめ…なさ、、うれしくて…。もう、だれも…たすけてくれないと、、おもってたから…。」
明は衝動でミコトを抱きしめた。
「あきら…?」
「大丈夫だ。お前は俺たちが守る。」
「うぅ……ありがとう、、」
しばらくして、ミコトが泣き止んだ。
「落ち着きましたか?」
「はい、ごめんなさい…変なところ見せちゃって。」
「気にするな。故郷が恋しくなるのは当たり前だ。」
「ふふっ。」
「なんだ?」
「明ってやっぱり優しい…///」
ミコトはほんのり頬を赤く染めている。その変化に鈍感な男が気づくわけはない。
「そんなことねぇ。俺じゃなくても同じこと考えるさ。」
「はぁ…明、そういうところは盲点ですよね。」
「あ?何の話だ?」
「いえ、何でもありません。鈍感なあなたに何を言っても伝わる気がしませんから。」
「はぁ?」
「ミコトさん、戻りましょうか♪」
「はい!」
「あ、おい!ちょっと待て!!」
疑問を抱く明をよそに、蒼とミコトは部屋へ戻って行った。
ーそれから竜人族と交流したり、勉強したりしてるうちに数週間が経過し、ミコトの怪我もだいぶ良くなってきた。
「痛みはどうですか?」
「もう大丈夫です。色々とありがとうございました。」
「確かに怪我は完治していますね。では、里に戻る手はずを整えましょう。」
「はい!」
怪我が治るまでの間で、ミコトはかなり元気を取り戻した。もとはかなり活発な子なのかもしれない…蒼はそう感じていた。
「明」
「わかってる。ただ、その前に始末しねぇといけない連中がいやがる。」
「え?」
「…やはり来ましたか。」
「あぁ。」
「あ、あの、だれが…」
「オークションを主催してた連中だ。こんなところまで追ってきやがったのか。」
明が行こうとすると、蒼が止めに入る。
「明、待ってください。」
「なんだよ?」
「まさか直接出向く気じゃないでしょうね?」
「俺が仕留めるのが一番速いだろ。」
「そういう問題ではありません。ここは私に任せてください。」
「は?」
「あなたの事情は、私が一番よく知っています。私があなたの前からいなくなることはありません、、なのであなたはミコトさんと一緒にここで待っててください。」
「ふざけんな!」
「明」
蒼が背筋が凍てつくほど落ち着いた声で呼ぶ。
「あなたを失うことを、私は一番恐れているのですよ。わかってくれますね?」
「…わかった。今回はお前に任せる。ただ、、」
「?」
「死ぬことは許さん。」
「もちろんです。私がいなくなったら、誰があなたを止めるんですか?」
「…行け。」
「仰せのままに。」
蒼は瞬時に奴隷商人たちを返り討ちに出た。
「蒼さん、大丈夫でしょうか…」
「アイツは強い、、心配いらない。」
そう言う明も、身体が小刻みに震えていた。
「(この人は、何に恐れているんだろう…)」
ミコトは明を励まそうと、明の手を取る。
「おい…」
「私も、こうしてもらった方が落ち着くから。」
「バカが、、、俺のことなんて気にするな。」
「私がしたいから!救ってもらったあなたを放っておけない。」
「…」
明はミコトの手を握り返し、静かに蒼の戻りを待った。
しばらくして、扉が開かれた。
「蒼さん!」
「ただいま戻りました。」
見たところ外傷もない…ミコトは安堵の笑みを浮かべた。
「怪我はないか?」
「見ての通り、かすり傷1つありませんよ。」
蒼が明に優しく微笑む。その笑顔に明も安堵しているようだった。
「それでは、ミコトさんをオオカミの里に送り届けましょう。」
「あぁ。ミコト、明日の早朝出発するから準備しとけ。」
「はい!」

