中央国家アルマーゼ、表向きは人種問わずの発達した国である。しかし、裏側では獣人や民族を毛嫌いし、オークションで売り飛ばしていた…。
「お頭!またやられました…」
「またか…。あいつら、また俺の仲間を。」
竜人族の当主である明は、部下の報告に腹を立てていた。この国は腐っている…
「取り戻す。」
「承知しました!急いで人を…」
「いや、俺1人で行く。」
「待ってください!1人でなんて、無謀です!!」
「無謀だと?」
「ひっ!」
「それは俺に言ってるのか?」
「そ、それは…」
本来竜人族1人に対して、鍛え上げられた精鋭軍隊100人送っても勝てる手立てはないほどの戦力差である。中には毒や麻痺も効かないものもいる。その中でも、明は最強だった。
「…無礼をお許しください。お気をつけて。」
「留守は任せたぞ。」
「…はい。」
明は特徴的な角と尾をしまう。いつもの格好を完全に変えて、オークションに参加した。
「身分証の提示をお願いします。」
「ほらよ。」
偽造した身分証を見せる。本来なら違法だが、このオークション自体が違法だ。何も言われない。
「確認しました。中へどうぞ。」
「ちょろいったらありゃしねぇ…。それにしても…」
明が気がかりなのは、仲間がどうやって捕まったかである。前述した通り、竜人族と人間の戦力差はどう足掻いても埋まらない。その竜人族を捕らえる方法…。
「ますます奇妙で胸糞わりぃ。」
会場に入って、裏への侵入経路を作る。まぁ、この作業にも慣れたもんだ。
「この経路なら確実だな。」
確認したところでアナウンスが鳴る。
”まもなく、オークションが開始されます。会場にお集まりください。”
「よし、行くか。」
明は関係者に偽装し、裏へと侵入を果たした。
「警備緩すぎだろ、バカにしてんのか?」
明はイラつきながら中へ進んでいく。中は無力化された獣人や民族が檻に入れられていた。最も希少価値も戦闘能力も高い竜人族は必ず奥にいるはずだ。
「……見つけたぞ。」
中の竜人族が目を覚ます。
「お、お頭…?」
「そうだ、怪我はねぇか?」
「なんでここに、」
「お前らを助けに来た。」
「ま、まさかお一人ですか?」
「何か問題あんのか?」
「い、いえ…」
明は檻に手をかけ、容易く破壊した。その様は同族も目を見張る。
「俺たち3人でやってもビクともしなかったのに…」
「結構硬いもので加工されてんだな。確かにこれなら脱出できなくても無理はねぇ。」
「あ、ありがとうございます。」
族の中でも明は交流を持たない。それでも当主として慕われるのは、圧倒的な強さと仲間を想う心を持っているからだろう。
「行くぞ。」
「はい!」
周囲を警戒しながら進むと、明はある檻に目がいった。
「お頭?」
「わりぃ、先に戻っててくれ。」
「え?でも…」
「これは命令だ。」
「は、はい…」
「そんなに威圧したら他の獣人も怯えるでしょう?」
腰まですらりと伸びた美しい長髪に眼鏡をかけた男が目の前に佇む。
「蒼、なんでいる?」
「部下からあなたが1人で乗り込んだと聞いて追ってきたんです。まったく、あなたの強さはわかっていますが単独行動はやめてほしいものですね?」
「余計なお世話だ。」
「まだそんなこと言ってるんですか?私はあなたの側近で、あなたを守るのが仕事です。」
「……」
「今回もあなたが行く必要あったのですか?」
「俺が行くのが一番速い。」
「そういう問題ではありません。帰ったら説教ですからね。」
「ちっ…」
「聞こえてますから…。それで何かあったんですか?」
「あぁ、向こうから血の匂いがしやがる。」
「でしたら私が見てきますよ。なので先に帰っていてください。」
「あ?逆だ、俺が見てくるからこいつら連れて先戻れ。」
「はい?」
当主と側近がこんなところで戦い始めたら終わりである…しかし、この2人を止められる者はこの場にはいないのである。
「はぁ…でしたら皆で一緒に向かいましょう。」
「なんでそうなる!」
「あなたにそんなこと言う権利があるんですか?」
蒼が鋭い視線で明を見る。この目になった蒼は何を言っても論破してくる…。
「…わかった。」
「はい、では向かいましょうか。」
そのまま全員で血の匂いのする檻に向かった。
「ここだな。おい灯りくれ。」
「どうぞ。」
蒼が用意した灯りで中を照らす。
「きゃあああ!!」
「!?」
幼い少女のか細い悲鳴に全員が目を見開く。
「こんな小さい子どもまで捕えているとは…。」
「ちっ!ふざけた野郎どもだ。おいお前。」
「ひっ!いや!!来ないでください!!!」
「明、威圧してはいけません。もう少し優しく!」
「無茶言うな、これがデフォルトだ…」
「では一度黙りましょう。私に任せてください。」
蒼は流れるように、静かに檻を破壊して少女に歩み寄った。
「いやぁぁぁ!!!」
「驚かせてしまって申し訳ありませんでした。我々は竜人族の者です。ここから血の匂いがしたので来たのですが…ひょっとして怪我をされているのですか?」
少女は恐る恐る蒼たちを見る。
「りゅうじん、さん?」
「はい、そうです。少し灯りで照らしてもいいですか?」
「は、はい…。」
明が灯りで照らすと、身体はやせ細りどこかに打ったのか、所々青くなっていた。
「明、どうするんですか?」
「お前、1人か?」
やはり明が怖いのか、少し怯えている。
「明?」
「……」
明は少女に目線を合わせるように屈んだ。
「すまねぇ、怖がらせるつもりはねぇがこれ以上はどうしようもねぇ…。」
「あっ…」
「すみません、彼もあなたを心配しているのです。顔が怖いだけです♪」
「おい!」
「大きな声を上げないでくださいよ、驚いたじゃないですか。」
「こいつ…」
完全に狙ってやがる…。
「ちっ、いいから戻るぞ。」
「この子はどうするんですか?」
「連れていく。」
「かしこまりました。お嬢さん、我々と一緒にここを出ませんか?」
「え、、でも…」
「心配には及びません。怪我が治ったらあなたの家族も探しますから。」
「!」
少女の目には涙が滲む。
「ありがとう、、ございます、、。」
蒼は少女を抱え、そのままオークション会場を後にした。
「お頭!またやられました…」
「またか…。あいつら、また俺の仲間を。」
竜人族の当主である明は、部下の報告に腹を立てていた。この国は腐っている…
「取り戻す。」
「承知しました!急いで人を…」
「いや、俺1人で行く。」
「待ってください!1人でなんて、無謀です!!」
「無謀だと?」
「ひっ!」
「それは俺に言ってるのか?」
「そ、それは…」
本来竜人族1人に対して、鍛え上げられた精鋭軍隊100人送っても勝てる手立てはないほどの戦力差である。中には毒や麻痺も効かないものもいる。その中でも、明は最強だった。
「…無礼をお許しください。お気をつけて。」
「留守は任せたぞ。」
「…はい。」
明は特徴的な角と尾をしまう。いつもの格好を完全に変えて、オークションに参加した。
「身分証の提示をお願いします。」
「ほらよ。」
偽造した身分証を見せる。本来なら違法だが、このオークション自体が違法だ。何も言われない。
「確認しました。中へどうぞ。」
「ちょろいったらありゃしねぇ…。それにしても…」
明が気がかりなのは、仲間がどうやって捕まったかである。前述した通り、竜人族と人間の戦力差はどう足掻いても埋まらない。その竜人族を捕らえる方法…。
「ますます奇妙で胸糞わりぃ。」
会場に入って、裏への侵入経路を作る。まぁ、この作業にも慣れたもんだ。
「この経路なら確実だな。」
確認したところでアナウンスが鳴る。
”まもなく、オークションが開始されます。会場にお集まりください。”
「よし、行くか。」
明は関係者に偽装し、裏へと侵入を果たした。
「警備緩すぎだろ、バカにしてんのか?」
明はイラつきながら中へ進んでいく。中は無力化された獣人や民族が檻に入れられていた。最も希少価値も戦闘能力も高い竜人族は必ず奥にいるはずだ。
「……見つけたぞ。」
中の竜人族が目を覚ます。
「お、お頭…?」
「そうだ、怪我はねぇか?」
「なんでここに、」
「お前らを助けに来た。」
「ま、まさかお一人ですか?」
「何か問題あんのか?」
「い、いえ…」
明は檻に手をかけ、容易く破壊した。その様は同族も目を見張る。
「俺たち3人でやってもビクともしなかったのに…」
「結構硬いもので加工されてんだな。確かにこれなら脱出できなくても無理はねぇ。」
「あ、ありがとうございます。」
族の中でも明は交流を持たない。それでも当主として慕われるのは、圧倒的な強さと仲間を想う心を持っているからだろう。
「行くぞ。」
「はい!」
周囲を警戒しながら進むと、明はある檻に目がいった。
「お頭?」
「わりぃ、先に戻っててくれ。」
「え?でも…」
「これは命令だ。」
「は、はい…」
「そんなに威圧したら他の獣人も怯えるでしょう?」
腰まですらりと伸びた美しい長髪に眼鏡をかけた男が目の前に佇む。
「蒼、なんでいる?」
「部下からあなたが1人で乗り込んだと聞いて追ってきたんです。まったく、あなたの強さはわかっていますが単独行動はやめてほしいものですね?」
「余計なお世話だ。」
「まだそんなこと言ってるんですか?私はあなたの側近で、あなたを守るのが仕事です。」
「……」
「今回もあなたが行く必要あったのですか?」
「俺が行くのが一番速い。」
「そういう問題ではありません。帰ったら説教ですからね。」
「ちっ…」
「聞こえてますから…。それで何かあったんですか?」
「あぁ、向こうから血の匂いがしやがる。」
「でしたら私が見てきますよ。なので先に帰っていてください。」
「あ?逆だ、俺が見てくるからこいつら連れて先戻れ。」
「はい?」
当主と側近がこんなところで戦い始めたら終わりである…しかし、この2人を止められる者はこの場にはいないのである。
「はぁ…でしたら皆で一緒に向かいましょう。」
「なんでそうなる!」
「あなたにそんなこと言う権利があるんですか?」
蒼が鋭い視線で明を見る。この目になった蒼は何を言っても論破してくる…。
「…わかった。」
「はい、では向かいましょうか。」
そのまま全員で血の匂いのする檻に向かった。
「ここだな。おい灯りくれ。」
「どうぞ。」
蒼が用意した灯りで中を照らす。
「きゃあああ!!」
「!?」
幼い少女のか細い悲鳴に全員が目を見開く。
「こんな小さい子どもまで捕えているとは…。」
「ちっ!ふざけた野郎どもだ。おいお前。」
「ひっ!いや!!来ないでください!!!」
「明、威圧してはいけません。もう少し優しく!」
「無茶言うな、これがデフォルトだ…」
「では一度黙りましょう。私に任せてください。」
蒼は流れるように、静かに檻を破壊して少女に歩み寄った。
「いやぁぁぁ!!!」
「驚かせてしまって申し訳ありませんでした。我々は竜人族の者です。ここから血の匂いがしたので来たのですが…ひょっとして怪我をされているのですか?」
少女は恐る恐る蒼たちを見る。
「りゅうじん、さん?」
「はい、そうです。少し灯りで照らしてもいいですか?」
「は、はい…。」
明が灯りで照らすと、身体はやせ細りどこかに打ったのか、所々青くなっていた。
「明、どうするんですか?」
「お前、1人か?」
やはり明が怖いのか、少し怯えている。
「明?」
「……」
明は少女に目線を合わせるように屈んだ。
「すまねぇ、怖がらせるつもりはねぇがこれ以上はどうしようもねぇ…。」
「あっ…」
「すみません、彼もあなたを心配しているのです。顔が怖いだけです♪」
「おい!」
「大きな声を上げないでくださいよ、驚いたじゃないですか。」
「こいつ…」
完全に狙ってやがる…。
「ちっ、いいから戻るぞ。」
「この子はどうするんですか?」
「連れていく。」
「かしこまりました。お嬢さん、我々と一緒にここを出ませんか?」
「え、、でも…」
「心配には及びません。怪我が治ったらあなたの家族も探しますから。」
「!」
少女の目には涙が滲む。
「ありがとう、、ございます、、。」
蒼は少女を抱え、そのままオークション会場を後にした。

