孤高の総帥は初めての恋に溺れる

手と足がそろって前に出ているような
ぎくしゃくとした穂香の様子に、碧斗は
さっきから笑いをこらえているようだ。

「碧斗さん、笑ってるでしょう。こっちは
こんなに緊張マックスだっていうのに、
酷いわ」

「ごめんごめん、穂香があまりに可愛くて
さっき手と足が同時に出そうになってたよ」

そう言ってついに大きな声で笑いだした。

穂香は憮然として碧斗をにらみながらも
、緊張がほどけていくのを感じていた。

涙目になりながら笑いが止まらない碧斗に

「ここは病院なんだから、笑いすぎよ。
そんなに馬鹿にするなら碧斗さんの秘書に
なる話はお断りしようかなあ。ジョナサンに
電話で相談したら是非にと言ってもらった
からOKしようと思っていたのに残念ね」

と意地悪く言ったら

「ええっ、本当に秘書の話受けてくれるの?
ほのかあ~~、ありがとう。愛してるよ」

と言って抱き着いてくる碧斗に

「だ・か・ら、考え直すわ」

「そんな意地悪言うなよ。穂香がそばに
いてくれるだけで僕は百人力なんだけど」

「これ以上仕事ばっかりするのなら却って
よくないと思う。私は碧斗さんが何かに
追われるようにとても強い義務感で生きて
いるように感じるの。側にいてそんな碧斗
さんの凝り固まった気持ちや強迫観念では
なく、もっと自由に好きな仕事を楽しんで
欲しいし、これから先の人生も一緒に心に
余裕をもって暮らしたい。二人ならそうして
生きていける気がするの。」

穂香の優しい言葉を聞いて碧斗は何かが
すっと胸に落ちてくるのを感じた。

そうか、僕は何か大きな義務感に囚われて
いたのかもしれない。

ラッセルグループを盤石にしなければ
いけない。祖父の後をきちんと繋いで
いかなければいけない。

そんな風にいつも思って生きてきたのだ。