孤高の総帥は初めての恋に溺れる

後でわかったことだが、一つのドアは
ゲストルームに続く廊下へのドアで
もう一つは洗面、バス、トイレに
洗濯室の空間に続くドアだったのだ。

この部屋は200㎡以上あると言う。
それでも、碧斗にすれば狭いらしい。
意味が分からない。

どれだけ広ければ満足するのだ
この総帥は、たった一人で住んでいる
のだ十分すぎると後で聞いて憤慨した
穂香だった。

玄関からリビングに続く廊下と言っても
すごく広い廊下なのだが、余裕で人が二人
すれ違える。

とにかく何もかもが規格外なので、リビングも
びっくりするくらい広いのだろうと驚かない
ように心の準備をしてリビングに入ったのだが
その広さに驚くより前に、リビングに寿司やが
出現しているのに驚いた。

「ええっ~」

と言って立ち尽くしている穂香を碧斗は
カウンターの前の椅子に座らせた。

寿司職人さんが

「碧斗さんお帰りなさい。早速握りますか?
お飲み物はどうされますか?」

と聞いてきた。

「穂香は飲めるよね?何にする日本酒、
ワイン、カクテル、ビールにもちろんウイス
キーでも何でもあるよ」

「じゃあ、ビールで」

やっぱり仕事終わりには冷えたビールだよね
と一人で相槌を打ちながら、温かいおしぼり
で手を拭き、

「シンガポールでも碧斗さんのリッチぶりに
は驚きましたが、寿司やさんがお家にやって
くるなんて初めてです」、

「そうか、また一つ穂香の初めてを貰えて
嬉しいな」

と言って本当にうれしそうに微笑む碧斗を
見て、胸がドキドキする穂香だった。