孤高の総帥は初めての恋に溺れる

穂香がA出口に着いたのは10分後だった。

碧斗はその速さにびっくりしてクックと
笑っている。

「本当に穂香は真面目だなあ」

「だって、総帥様を待たせる訳にはいかない
ですから」

碧斗はちょっとむっとしたようだが、呼んで
おいた迎えの車に穂香を乗せた。

「穂香、お腹は?夜ご飯食べた?」

「はい、5時ごろに軽く頂きました。」

「軽くならまだ食べられるよな?食いしん坊
の穂香なら大丈夫だよな」

「食いしん坊は余計です」

穂香はちょっと拗ねて口を尖らせた。

「そんな拗ねた穂香も可愛い」

「もう、何言っているんですか私なんか
数いる総帥の遊び相手の一人でしょう。
知っているんですから、あなたの秘書の
ジョナサンという方から忠告のお手紙も
戴きました。イギリス人のご令嬢と婚約も
もうすぐ調うって事も教えてくれましたよ」

「その話はあとでゆっくりしよう。
とりあえず寿司でいい?」

「お寿司大好きです」

「じゃあ、よかった」

それからは二人とも何も話さず車内は静かで
車が静かに走る音だけ聞こえていた。

30分位して
「さあ、着いたよ」

そういって、降ろされたのはホテルのような
豪華な車寄せのある建物なのだが、ホテル
でも寿司屋でもなさそうで、ドアをくぐると
右手にはカウンターがあって

「お帰りなさいませ」

という声が迎えてくれた。

「ここは?」

と尋ねる穂香に

「僕のマンション」

「へっ?」

と素っ頓狂な声を上げて立ち止まる穂香の
手を引いてエレベーターに乗せられた。

後で”僕のマンション”が、その言葉通り
1棟丸ごと碧斗の所有だと分かった時も
開いた口が塞がらなかった。