孤高の総帥は初めての恋に溺れる

きっと秘書の人が穂香が今回の事を忘れ
られるように碧斗から身を引くように手助け
してくれているのだろうと人のいい穂香は
そう判断した。

納得いかないのであればお金で解決
する用意があるのでジョナサンまで連絡する
ようにと書いてあって、ジョナサンの携帯の
番号まで描かれてあった。

なんとなく手慣れた感じの内容だった。
穂香はその手紙を読んで、却って吹っ切れた
昨日の夜の碧斗は真摯で噓を言っているよう
には思えなかった。

でも、恋愛経験もない穂香をその気にさせて
手玉に取るのなんか、碧斗にすれば朝飯前の
事なのだろう。

秘書の手紙はありがたかった。

穂香が深みにはまらないようにと気遣って
くれたのだと思う。

楽しいシンガポールの夢として大切な思い出
にしまって置こう。

もう魔法は消えたのだ。

秘書の手紙はそう穂香に踏ん切りを
付けさせてくれた。

穂香は、その手紙をごみ箱に捨ててシンガポ
ールの最後の夕食を、食べにレストランに
少しおしゃれして出かけて行った。

もう泣かない。いい夢を思い出に笑って
シンガポールを発とうと微笑んで部屋を
後にした。