孤高の総帥は初めての恋に溺れる

穂香は碧斗のメモの下に
“碧斗さん幸せな時間をありがとう”と
書いて、メモは持たずに朝食も頼まず自分の
部屋に帰っていった。

碧斗の連絡先はもうわからないし、あのメモ
が碧斗に届くかもわからない。

でも、碧斗とはあまりにも不釣り合いすぎる
シーソーに二人で乗ったら、身分の軽い穂香
は碧斗が下に下がったら軽すぎてどこかに
飛んで行ってしまうだろう。

なぜだかそんな事を考えて笑ってしまった。

碧斗のような素敵な男性と夢のような一日を
過ごして自分の初めてを貰ってもらえた。

それでもう十分だ。

これ以上何かを求めたりしたら罰が当たる。

よくおばあちゃんが言っていたっけ“過ぎたる
は及ばざるが如し“って、ちょっと今の状況
とは違うかも…

とにかく高望みはせずに身の丈に合った恋を
するべきなのだ。

ラッセルグループの総帥なんて、自分の身の
丈の100倍以上の人なのだ。

シンガポールの夢としていい思い出に
しよう。そう思っていても胸は張り裂け
そうな程に痛い。

お風呂につかりながらずっと泣いていた。

お昼になってもどこにも行く気もしなかった

もう碧斗はここには居ないと思うと何も
したくなかった。