孤高の総帥は初めての恋に溺れる

碧斗は、穂香に名刺を渡しながら

「ギャングじゃないよ。ラッセルグループの
総帥なんだ」

今度こそ穂香は口をあんぐりと開けるのを
止められなかった。

「そそ、総帥」

と素っ頓狂な声を上げた。

自分は何も知らずラッセルグループの総帥に
失礼な事のあれやこれやをやってしまって
いた。

挙句の果てにギャング呼ばわりまで…
人生詰むとはこういうことを言うのだろう
何ならギャングの方が、ありがたかったと
顔面蒼白になっていく。

もう、羽田でラッセル航空のハンドリング
なんかやらせてもらえないかも知れない。

「申し訳ありません。知らぬ事とはいえ
失礼の数々、ギャングとまで言ってしまって
もうハンドリングも首ですか?」

「何を言ってるんだ。穂香とはこういう事
抜きで接していたんだ。今まで通りにお願い
するよ。穂香にまでこんなことで距離を置か
れたくないんだ。でも、何も言わないのは
卑怯だと思ったからこうして名刺を渡したん
だ。僕は明日早朝にシンガポールを発たなく
てはいけない。東京に戻るのは1週間ほど
先になる。東京でもまた会って欲しいんだ。
穂香が好きなんだ。女の人を好きになったの
なんて初めてなんだ、多分一目ぼれしたんだ
穂香僕の恋人になってもらえないだろうか?
穂香の事大切にするし、何者からも穂香を
守ると誓うよ」