孤高の総帥は初めての恋に溺れる

「瀬古穂香26歳、JOAのグランドスタッ
フだ。この春からラッセル航空のハンドリン
グに移動になっている。仕事ができるスタッ
フで職場での信頼も厚いようだ。今回
R797Xに乗る為にシンガポールに来たようだ
彼女R797Xが大好きなようで就航記念の
セレモニーもしっかり裏方で頑張ってくれて
いたみたいだ。護身術の有段者でもある。
そして趣味が一人旅と小説を書いてネットに
投稿することだ。ペンネームはR797Xだよ。
よっぽど好きなんだな。我社としては嬉しい
限りだが、総帥の妻としては認められない
だろうな。遊びならいいが、真剣になり
そうなら今回の休暇のお遊びで満足して
忘れるんだな」

「それは無理な相談だ。なぜ穂香が側に
いてはいけないんだ。もう恋してしまっ
た。今更止める事なんてできないよ。
心は制御できない。ジョナサンだって
分かっているだろう」

「でも、ラッセル卿はイギリス人の貴族の
ご令嬢と結婚させたいみたいだぞ」

「知るかっ、余りごちゃごちゃ言ってくる
なら総帥の座なんかやめてやる。
父さん達が亡くなってから6年死に物狂い
で働いてきたんだ。結婚くらい自分の好き
な女としたい。それがだめなら総帥の座は
誰かに譲る。お前がやれよ」

ヒューとジョナサンは口笛を吹いた。

「すでに時遅しと言う事か?たった1日
じゃないか、どうなってんだ」

「1日でも1時間でも1秒でも恋に堕ちる
のには充分なんだよ」

そうだ、碧斗は穂香にもうしっかり堕ちて
しまっていたのだ。