孤高の総帥は初めての恋に溺れる

これは困ったことになったと、カジノの
片隅でワインのグラスを片手に碧斗と穂香
を見つめていたジョナサンは内心思って
いた。

ラッセル卿からは碧斗の妻にはイギリス
人の女性をと言われているのだ。

でも、碧斗の心底楽しそうな笑顔と穂香を
見る優しい眼差しに、ここ数年の殺人的な
スケジュールを淡々とこなす碧斗をそば
で支えているジョナサンは、碧斗の初め
ての恋を応援したいと思う自分もいる。

どっちにしても前途多難だ。
彼女は碧斗の立場もきっと何も知らない
だろう。

だからこそ碧斗が惹かれるのもわかる。
ラッセルグループの総帥としての碧斗の
立場を知った時彼女はどう出るのか、
ジョナサンには全く想像できなかった。

ジョナサンは二人がルーレットを楽しんで
いる時に、碧斗がデイーラーに目配せし
たのを見ていた。

きっと彼女の掛けたように操作して彼女を
勝たせていたのだろう。

それでも、ある程度勝ったらさっさと止め
てしまったのには驚いた。

欲もないのか?

そして昼間見た光景を思い浮かべ、彼女
を調べてみないといけないと、すぐに
携帯を取り出して指示をした。

1時間もすれば彼女の詳しい素性の報告
が来るだろう。

得体の知れない女をいくら碧斗が好きに
なったとしても、側にはおけない。