孤高の総帥は初めての恋に溺れる

雨の日はタラップには屋根がついたもの
を使うので、絶対にお客様を濡らしては
いけなという厳しいルールがあった
らしい。

暗黙の重圧が新人スタッフに掛かると
言って笑っていた。それこそ試練だ。

そんな苦労も愉しかったので、
キャッシャーには行きたくなかったようだ。

ジュニアパイロットの世話や遅れそうな
お客様の荷物を一緒に持ってゲートまで
走ったり、視覚障害のある方には、ゲート
までの誘導やお迎えして出口までの誘導
などもある。

その辺は今の穂香達の仕事と変わらない
悪天候や機体の故障で欠航などになると
ほかの便や他の航空会社に切り替える為
キャッシャーがゲートまで呼ばれてその
対応をしなければならず、手計算でその
差額を計算してお返ししたり,追徴した
りする。

他社便の行き先が同じ所ならば、チケット
の裏にハンコを押して必要事項を書き添え
る。

裏書と言うそうだが、それがあるとその
ままのチケットで他社便を利用して頂ける
のだ。

そんなことを祖母は穂香に楽しそうによく
話してくれた。

穂香も今の仕事が好きだから、祖母の話
には共感できるし昔のグランドスタッフは
すごいなあと心底感心するのだった。

そんな祖母も美しい夕日となって沈んで
しまった。

もっと祖母の話を聞きたかった。
そういう話を穂香とできるのが祖母は何よ
り楽しいようで、いつもニコニコしながら
昔語りをしてくれた。