孤高の総帥は初めての恋に溺れる

そんな1週間を過ごした二人は、東京に
帰って穂香も仕事に戻った。

碧斗のマンションで一緒に暮らしながら、
穂香はグランドスタッフとしての残り少ない
日々を全力で楽しんで働いた。

そんなある日、イギリス人の女性が穂香の
いるゲートに現れた。ミレーヌだ。

ジョナサンから彼女の写真をもらっていた
ので、穂香はすぐに気づいた。

「あなたが穂香?テオの出来損ないの
婚約者ね。本当に貧相ね。あなたのどこが
いいのかしら、テオの気が知れないわ」

そう言って穂香を上から下まで睨め付けた。

少し前までの穂香なら、引いてしまいそうに
なったが、碧斗の愛情をしっかりと感じて
いる今はそんなミレーヌの不躾な視線に怯む
つもりはない。

「あら、ミレーヌさんでしたか?強制送還
されて入国禁止になったのではないん
ですか?」

「私はイギリスの貴族なのよ。そんなもの
どうにでもなるわよ。それより身の程を
知りなさいよ。ラッセルグループの総帥の
妻は、あなたのような庶民で社交のマナーも
わからないような女には務まらなくてよ」

「あら、社交のマナーならこれから覚えて
いけばいいって、碧斗さんが言ってくれて
ます」

「そんな付け焼刃のマナーなんかすぐにボロ
が出るわよ。そうして碧斗に恥をかかせる
つもりなの?どんなにあがいても庶民は貴族
には成れないのよ」

「私は貴族なんかになりたいとは、思いませ
ん。ただ碧斗さんが万全の態勢でお仕事が
できて家ではリラックスできるそんな場所を
作ってあげたいだけです。私の側で笑っていて
くれたらそれで幸せです。総帥の妻という
立場には興味がありません」